当方、ライブとかスポーツ観戦とかは基本的にテレビ派である。
そりゃまぁ好きなアーティストなら眼前で見たいと思うが、最前列のチケットがミラクルでとれたならまだしも、一般人にはかなり厳しい懐事情になるし、スポーツにしたって、実際にはテレビの方が全体が良く見えるじゃん、とか思ってしまうのだ。
今回、そんなフェス初心者の僕が、
朝霧JAM 2018 – It’s a beautiful day
に突撃してみようと思い立ったワケで。
キャンプすらまともにしたことがない堂々たる初心者として、事前に準備したこと、現地で感じたこと、こうしておいた方が良かった!ことなどをまとめておきたいと思う。
朝霧JAMとは
静岡県は富士宮市、富士山麓の朝霧アリーナで毎年開催されている野外のライブイベントで、2001年から開催されているので、その歴史はかなり長い。
2018年の会場に大きなステージは二つ。メインに「RAINBOW STAGE」、もう一つが「MOON SHINE STAGE」。当然、レインボウの方が大きい。そこまでステージ間の距離は離れていないので、同時開催のライブを半分ずつ見ることもできる。
このあたりも僕は良くわかっていないのだが、フジロックとかに比べると、朝霧JAMはフェスに出演するアーティスト様も含め、比較的落ち着いたフェスなそうな。渋谷のハロウィンみたいに、ただイベントだから騒ぐみたいな人たちが圧倒的に少ないのが特徴で、それは毎年維持されているらしい。
そのため、フェス初心者でも、ノリについていけず置いてきぼりになることはそんなにないとのこと。実際、大自然の中で響く音楽の前では、小さいことはどうでも良かったのは事実だ。
購入すべきチケット(入場券・駐車券)
まずはチケットの話からしよう。販売開始から一瞬で売り切れてしまうようなフェスのチケットはそうそうないそうだが、転売屋が暗躍しそうな領域でもあり、実際には、かなりの人がメル〇リとか、ヤフ〇クとかで譲り受けたチケットで参加することになっていると思われる。
ご多分に漏れず僕も、行くと決めたはいいものの、入場券を入手できたのは開催日の5日前だった。
入場券そのものは15000円(販売価格)の二日間通し券、1種類しかないので、そこで悩む必要はない。最終的に幾らで手に入れるかは、その人がその価値を決めるしかない。
問題なのは、駐車券だ。
先人たちが教えてくれたのが、この駐車券問題。朝霧JAMは、毎年12,000人/日くらいの入場者数だが、駐車場はそれほど多くはない。特にステージから近い「場内駐車券」は、先行販売の時点で売り切れてしまう代物らしい。
駐車券には種類があり、「場内駐車券」「場外駐車券」「ふもとっぱらオートキャンプ駐車券」「ふもとっぱらキャンプ駐車券」と分かれている(2018年)。勿論、入場券さえあれば、電車とタクシーで行くことも可能なので必須ではないが、現地人でもない限り、車で行くのが賢い選択だろうか。金額も異なるので、ここは悩みどころになるはずだ。簡単に言うと、会場までの距離とキャンプできる場所が違う。
☆できれば「場内駐車券」を入手しよう。
駐車券とキャンプ設営可能な場所が連動しているため、「会場の近くまで車で行けてその近くにテントを張れる」となると、「場内駐車券」しかないのだ。
地図を見てもらえるとわかると思うが、場内駐車場からCAMP SITE Aはかなり近く、CAMP SITE Aからは、「RAINBOW STAGE」が見えるレベルで近い。
ところが場外駐車券となると、CAMP SITE Aにテントは張れるが、会場までシャトルバスで移動せねばならない。シャトルバスに乗れれば10分程度の距離であるが、乗り込むまでがなかなかに大変。その上、かなりの荷物を持って乗らなければならない。最終日なんかは、場外駐車場に戻るシャトルバスに乗るまでに、1時間以上並ぶことになるらしい。
バスに乗らず、自力で歩くこともできるらしいが、経験者によると、山道のため結局1時間くらい歩くことになる、とのことだった。
それはそれで楽しめる、という方であれば、大した問題ではないのかもしれないが、無論、僕は全力で『場内駐車券』をコールした。初心者に過信は禁物、強がってはならない。
レンタカーで車中泊するために
日常的に車に乗ることがないので、僕はマイカーを持っておらず、基本的にレンタカー生活だ。
最近はTimesのカーシェアリングとレンタカーがかなり使いやすく、特に重宝している。
何がいいって、全てネット上で完結できる上に、営業時間という概念がないところだ。何時でも借りることができるし、何時に返したっていい。さらに、『一番近くのスタンドでガソリンを満タンにして返してください』という、あの一番面倒なシステムが存在しないのだ(運転中にガソリンが減れば給油はしないとならない)。それで通常のレンタカーとほぼ料金は変わらないか、うまくやれば安くなる。
で、今回もお世話になることに。午前3時に借りて、48時間後の3時までに返す(二日換算でこういう時間割が組める)、という形で、Timesレンタカーを利用することにした。これを一般的なレンタカーでやろうとすると、営業時間の問題でどうしたって三日換算になるので、割高になってしまうのだ。
開催期間中に台風25号が近付いていて、雨が降る想定もあったので、現地では友達の張ってくれたテントを本拠地にするものの、寝るのは車で!という方針になったので、車中泊の仕方を色々と調べてみた。
そこで候補に上がったのがトヨタのシエンタ。ミニバンタイプでそこそこ広く、車中がフルフラットになるため、そこで何らかの工夫をすれば足を伸ばして寝られるというワケだ。
そりゃまぁキャンピングカーとかが良かったんだけど、大型のレンタカーは二日も借りればなかなかのお値段になるので、大人二人で寝るくらいなら、そこそこの大きさでいいであろうと。
だがしかし。時既に遅し。
三日前にレンタカーの予約をしようとしたところ、既にレンタル可能なシエンタ様が借りられていらっしゃる。次候補であったホンダのフリード+も既にない。
☆チケットが入手できていようがいまいが、車は早めに抑えておこう。
その時点でレンタル可能で、車中泊ができそうな車で残っていたのが、スズキのソリオだった。Timesでカーシェアするときは、ソリオはメチャメチャいい車。小型の割に車高が高いし車中が広いので運転しやすい。ふだんはソリオが空いていれば、ソリオを借りる。
しかし、車中泊となると、さすがにちょっと手狭であろうと、今回の長旅の候補には挙げていなかった。これは悩んだ。少しお高くなっても別のところでSUVとかをレンタルするか、ソリオで良しとするか。
実際にカーシェアで少しソリオを借りて、フルフラットモードを試してみたところ、僕は驚いた。こんなに小型の車でもきっちりフルフラットになったのだ。当然、そこそこの凹凸はあるのでそのままでは寝られないが、エアベッドを敷けば問題ない、これなら行けそうだ、とレンタカーはソリオにした。
事前に準備しておいた良かった持ち物リスト
フェスでの必須アイテム、的なものは、詳しい方がちゃんと何処かのWebで紹介してくれているのでそちらを見ていただき、僕の方では、実際に購入して使ったアイテムだけを紹介しておこうと思う。
①長靴(レインブーツ)
初日が雨だったので、マジ必須だった。聞くところによると、サンダルでフェスに来る方もいらっしゃるそうだが、朝霧で僕がそれを見かけることはなかった。見事にみんな、きっちり長靴で雨対策をしていらっしゃった。年季を感じる。
僕が勧められて購入したのはこちら。
『日本野鳥の会 バードウォッチング長靴 レインブーツ』約4500円
「野鳥の会て!」と最初は突っ込んだものの、沼地を歩く用の長靴がフェスに最適!とのことで、なかなかカッコイイのと、ものすごいコンパクトに丸めることができるので、これにした。僕はふだん、26~26.5なので、Lサイズで良いと思ったが、靴下を履いたらギュウギュウで、結局LLで買い直した。こちらを購入するなら、少し大きめを買った方が良いだろう。
実際、これを持って行かず、スニーカーだけだったら、雨でぬかるんだ山道で、僕はヒドイ目に遭っていただろう……天気予報がどうであれ山の天気は変わりやすい。短いレインブーツでは、足元は平気でも靴の中に雨や泥が入ってしまう。動き回るならなおさらだ。膝の下あたりでギュッと縛ることができる、野鳥の会デザインは理に適っているのだ。
☆長靴(レインブーツ)は必須中の必須。
②レインポンチョ
もう1点、雨対策として勧められたのがレインポンチョ。初心者あるあるらしいが、フェスでは会場にヒトが密集するので傘の使用はNGとのこと。言われてみれば確かに危険すぎる。そのため、雨具は動きやすいポンチョになるそうだ。
『キウレインポンチョ KiU RAIN PONCHO』4644円
レインコートだと、どうしても動き方によっては水が入ってきてしまうらしい。実際、ポンチョはとても動きやすく、かなり土砂降りの瞬間もあったが、羽織っていれば身体が濡れることはなかった。
KiUのポンチョは高品質の上にめちゃめちゃコンパクトに畳め、すごくオシャレだったので、これにした。ネット上に安価なポンチョは幾つもあったが、確かな品質のポンチョでないと、容易に雨が貫通してくるらしい。
☆山に持って行くポンチョは、多少高くてもブランドものがオススメ。
③エアーベッド
ソリオがフルフラットになると言っても、そのまま寝たのでは背中が痛くて死んでしまう。そこで考えたのがエアーベッド。
サイズとか価格帯とか、色々吟味して選んだのがこちら。
『Sable エアーマット エアーベッド 耐荷重300kg 薄型 203x99x厚さ20cm(電動ポンプ付き)』約6500円
エアーベッドなんて使ったことがなかったので、ググりまくって選んだのがこれ。電動ポンプを使えば、空気は1~2分間できっちり入る(電動ポンプ以外でちゃんと膨らませるのはまず不可能)。寝心地も悪くない。ソリオに入るサイズ、という条件があったのでサイズ選びに苦労した。寝返りを打つとさすがに狭く感じるが、大人二人が横になるには十分な広さだった。これで毎日寝ろと言われたらツラいが、数日程度なら何も問題はないだろう。
☆車中泊にエアーベッドは使える!サイズに注意。電動ポンプを忘れずに!
④カーインバーター
エアーベッドの空気を入れるには、どうしても電動ポンプが必要になる。そして電動ポンプには、当たり前の話だが、電気が必要だ。しかも140Wと来ている。山の中でこの電力を手に入れるのは何気に難しい。スマホを充電するような小型バッテリーではどうにもならない。コンセントが差せるバッテリーが必要だ。
ということで、コンセントの差せるバッテリーを探したのだが、これがなかなかにお高い。信頼できそうなレベルになると、3~5万円くらいの代物になってくる。
特に最近は災害大国ニッポンでもあることだし、ここはいっちょ、長期停電したときの予備電源に、そこそこちゃんとした中型バッテリーでも買っておこうかと、5万円のバッテリーをポチりかけたその時、「車で行くんだから、車から電源とれんじゃね?」という神のお告げが!!
そこで辿り着いたのがこいつ。
『BESTEK カーインバーター 300W シガーソケット 車載充電器 USB 2ポート ACコンセント 2口 DC12VをAC100Vに変換』3180円
欧米地区ではBestsellerランキングのNO.1を長期間独占していると触れ込みで、Amazonのレビュー評価も3.9を誇るこちらの商品。
実際、めちゃめちゃ優秀だった。デザイン性にも優れ、現場でも問題なくACコンセントを稼働させ、USBポートもついているので、スマホは勿論、PCや小型バッテリーの充電もできる。シガーソケットに差し込んでからの起動も早く、小型で邪魔にならない。それがなんと3000円ちょい!確かにこれは買っておいて損はない逸品だった。
カーインバーターに関しては、非喫煙者が、唯一、喫煙者に感謝してもいいかもしれない。シガーソケットという概念がなければ、こういった形での電力確保は生まれていなかったかもしれないのだから。というか、きっと「シガーソケット」なんて呼称は既にされておらず、その用途で使われることなど皆無で、「なんかアクセサリでつなぐとスマホが充電できる穴」くらいの認識しかされていないんだろうけど。
☆車で行くなら、カーインバーターを一個は持って行こう!
☆ただし、フェスの駐車場内では、エンジンは付けっ放しにできない!瞬間使用は1分くらいで済ませよう。
※車は走っていないとバッテリーに蓄電されない。停車中にカーインバーターでガンガン電力を使うと、バッテリーが上がってしまうので、そこだけは注意しよう。
⑤自動車用の遮光サンシェード
車を持っていない方は「サンシェード」と言われてもピンと来ないだろうが、車のウィンドウたちに取り付けて目隠しするアレである。車中泊となると、外から車の中が見えるのは問題だし(ほとんど人はいないが)、遮光しておかないと、とんでもない早起きさんになりかねない。当然、フェスの駐車場内ではエンジンがかけられないので冷房が使えず、車中の温度が上がるのを防ぐためにも持って行ったアイテムだった。
『Green Convenience 遮光サンシェード 車用 6点セット』1100円
それなりに目隠ししてくれたし、太陽光も遮ってくれたので、持って行って良かったのは間違いないが、取り付け方がラフすぎるのと、予想通り窓のサイズが微妙に合っていなかったので、期待役割の7割程度しか果たせなかった。
だがこれは、その車種専用のサンシェードを買わないとおそらく解決できない問題だろう。マイカーならともかく、レンタカーとなると、ほとんどの車の窓は6枚だろうが、それぞれの窓の大きさなんて、車の数だけ存在するのでドンピシャのものは用意しにくい。何より、ふだん使うようなものではないので、安く済ませたい。利用する車種が決まったら、できるだけ近しいものを用意する、で良しとするしかない。
目隠し・遮光という意味ではカーテンの方が汎用性は高いが、こちらは値が張るので、手作りするのも一つの手かもしれない。
☆車中泊ならサンシェードは必須。サイズに注意。
⑥野外用の椅子
本拠地になるテントがあるとは言え、持ち運びできる自分用の椅子は持っておいた方がいい、というアドバイスを受け、お次は椅子選び。重そうだし、邪魔そうだし、野外ライブに椅子なんている?と思っていたあの頃の僕が今は恥ずかしい。
アウトドア用品の有名どころメーカーを幾つか紹介してもらったのだが、僕はHelinoxというメーカーが気に入った。何となくフォルムのデザインが好きなのと、ちょっと高いけどまぁまぁ……くらいの価格帯だったからだ。キャンプ経験者御用達のメーカーらしいが、当然、僕は知らなかった。「アウトドア」で想像できるのは、「コロンビア」くらいだ。
『Helinox(ヘリノックス) 『サンセットチェア』(シトラスイエロー)』19800円
素敵な椅子だった。
ステージ前で跳ねたり踊ったりするのも楽しいが、草原の真中で椅子に座ったまま微睡んで遠くに聞こえる音楽に耳を傾ける、というのも乙なもの。さすがに疲れてぐで~っとしたい瞬間もあるので、背もたれ付きの椅子にして本当に良かった。雨さえ降らなければ直接芝生に座れるので椅子はいらないかもしれない。だが雨が降ると、椅子は急に必須アイテムになる。
初心者の僕が何よりも驚きだったのは、こういったアウトドア用品が、恐ろしくコンパクトに仕舞うことができ、如何に軽くて丈夫か、ということだ。持てる荷物は少なく、そして軽い方がいいのは当然だが、このHelinoxの椅子の軽さは、僕の常識を遥かに超えていた。それでも、組み立てた後は、まったく強度に不安が残らないくらい、ガッチリ固定されるのだ。椅子の重量は1.5kgしかないのに、耐荷重140kgってどういうこと!?
その素晴らしくクリエイティブな設計は、見ていて楽しい。フツーに楽しい。キャンプ初心者が最初に色々買ってしまうのはわかる気がする。
☆椅子は必須とまでは言わないがフェス生活を充実させてくれるアイテム。
実際、一式を揃えていくと、なかなか高い買い物になってしまうのだが、「まず道具から入る」はキャンプの登竜門。ふだん使いもできるアイテムたちなので、それなりに品質の高い物を買っておいても損はないだろう。
10/6(土) 朝霧JAM 一日目 朝風呂とオープニング
朝霧JAM自体のオープニングは10/6(土)の14:00。
先人たちの進めで、東京を午前4時に出発。渋滞に巻き込まれることもなく快適な高速ライフを突き進み、朝の8時前には静岡入り。移動しながら晴れることを祈っていたが、台風25号の影響が消え去ることはなく、天気が悪かった。ポツポツと感じることはあるものの、雨らしい雨というわけでもなく、ひたすら曇天が続いていた。
先人たちによると、フェス前にひとっ風呂!というのが乙らしく、静岡県富士宮市ひばりが丘805にある【富嶽温泉 花の湯】に立ち寄る。
花の湯は、新富士ICから車で30分くらいでつくので、朝霧に行く前に寄るには便利な場所にある。早い時間であれば、混雑もほとんどなく、もともとホテルなので、ゆっくりと広い大浴場につかることができる。大人:平日:立ち寄り(60分限定)で800円。
さっぱりしてから午前9時くらいには現地に向かい、早々に駐車場に辿り着いた。
ここで既にソリオをフルフラットにし、エアーベッドも準備し、車中泊の準備も完了。オープニングまで4時間近くの余裕があった上に、滞りなく予定通りに進んだためか、油断した僕は、そのエアーベッドに寝転んでしまった。
…………
………
……
…
気付いたときには、遠くから大音量の音楽が聞こえてきていた……
まさかのオープニングに立ち会えずという失態。
僕は車を飛び出して、会場に向かった。
雲である。
見上げる空には雲しかなく、凄まじい雲しかなく。細かい雨が降ったり止んだりを繰り返していた。しかし、雨はさほど会場の雰囲気に影響を与えていなかったように思う。
レインボーステージの前では、みんなポンチョに身を包み、既に思い思いのスタイルで自然に同化しかけている。小雨に打たれながら芝生に大の字になっている勇者、とんでもなくでかいテントを作り続けている武闘家、ずーーーーっとシャボン玉を飛ばし続けている魔法使い、ステージの先頭で踊る文字通りの踊り子。
こ、これがフェスか。
人生初のフェス、その野外ステージで僕が最初に見たのは、変な帽子を被ったおっさんだった(怒られるぞ)。
お恥ずかしい話、今回の朝霧JAMの出演アーティストで、バンド名を知っていたのは「clammbon(クラムボン)」くらいで、他の方々は初見である。
それでも。
それでも音楽を聴くと、身体がリズムを取り出す。当方、音楽的センスは先天的に壊滅的で、音階ってなに?ドレミって何が違うの?というソウルしか持ち得ずに生まれた人間だが、音楽というものが遺伝子の何処かに刻まれているものだということは何となくわかる。いつの間にか、僕はまったく知らないバンドの音楽で、見知らぬ人たちと一緒にゆっくりとステップを踏んでいた。
山の音楽、恐るべし。
何だろうか。フェスというのは、「音楽とか歌を聴く」というよりは、「リズムを身体に受け入れる的」なもの?
朝霧JAMのトイレ事情
ここで気になるトイレ情報。
当然、山なので。
汲み取り式というか、貯蓄型というか、落下自然式というか、水で流すなんて言うオシャレな機能はない。個室内に”ブツ”が蓄積されていく以上、ニオイだけはどうしようもないので、そこは理解しておく必要がある。簡易的にではあるが、きちんとトイレットペーパーが交換用まで含めて用意されていることに驚いたが、常にスタッフが管理できているとは限らない。タイミングによってはペーパー切れの瞬間はきっとある。
☆もしもの場合の紙は、必ず常備しておこう。
トイレの混雑具合はというと。
ステージとステージの合間だとさすがに多少混雑はするが、警備員が誘導するほどではなく(そのへんの花火大会の方がよっぽど地獄絵図だろう)、みんなが暗黙の了解と常識の範囲内で行動すれば、混雑時でも15分以上待つことはないだろう数が用意されていた。
そして男子に朗報だったのは、『立ち専用』のトイレが用意されていること!回転率だけ考えれば、これはとても良かったと思う。
10/6 朝霧JAM 一日目 ポンチョと豪雨
『YOUR SONG IS GOOD(ユアソングイズグッド)』で大体の感触を掴んだ僕は、現地で合流した仲間たちとムーンシャインステージに向かった。目当ては『CHAI(チャイ)』だ。
レインボーステージと違って、ムーンシャインステージはステージの高さが低い。柵はあるものの、より近い場所でライブを楽しめる。僕らは最前線まで人波をかき分け、めちゃめちゃ盛り上がるNEOカワイイを堪能していた。
僕は初見だったが、『CHAI(チャイ)』は、見た目からは想像できないロック感・歌唱力、演出、MCと、総じて素晴らしいバンドだった。帰りの高速道路が『CHAI(チャイ)』のプレイリストだったことは言うまでもない。
☆フェスの醍醐味の一つは、見知らぬバンドとの出会い。
だと先人たちは語る。ここで知って、そこからファンになることも多いのだと。
知らないバンドを見て楽しいのか?盛り上げれるのか?と思われるかもしれないが、何の前情報もなく、ライブだけを感じて、何かが琴線に触れる。音楽って、そういうことじゃない?←
『CHAI(チャイ)』ステージ中に山の洗礼。
小雨程度だった雨が、急激に勢いを増し、一瞬で豪雨に変わる。
ここで更なる失態が判明。僕は、少し雨が弱まっていたこともあり、ステージ移動時にテントにポンチョを置いてきてしまったのだ。こういうときのポンチョなのに!なのに!
はい、ずぶ濡れ。
こ、これがフェスか。
その日は、運転疲れもあったからか、大盛り上がりの『GOGO PENGUIN(ゴーゴーペンギン)』を最後に、車に戻ることにした。
この日はずっと曇りだったためにそうでもなかったが、山の夜はとてつもなく寒くなることがあるらしい。10月なので、冬の足音は聞こえていた。実際には使わなかったが、僕も準備として、極暖ヒートテック、ウルトラライトダウン、フリース(全部ユニクロ)、で更に極厚ダウンジャケットと、防寒カルテットを揃えていった。山の中では電気がないので、羽織ることでしか寒さを凌げない。これは恐ろしすぎる。去年は本当に寒くて震えっぱなしだったと先人たちは語った。
☆例え荷物が増えてしまっても、防寒対策は必須。
10/7(日) 朝霧JAM 二日目 太陽と鹿と朝風呂
晴れである。
これでもかってくらいに晴れた二日目。
目覚めたと言うよりは、日差しが強すぎて、サンシェードの隙間から突き刺さる太陽光の鋭さで車の中で起きてしまった、というのが正しい。
エアーベッドのおかげで、そこそこしっかりした睡眠がとれたのは間違いないが、快適快眠!超ぐっすり!という訳にはさすがにいかない。狭い空間での睡眠でもあり、身体の節々はやや痛い。とは言え、活動に十分な体力は回復できている。
夜はそこそこ蒸し暑かった。だがエンジンをかけられないのでエアコンはつけられない。さすが山の中、10月でもまだまだ普通に蚊が飛んでいたので、車の窓を全開にしておく訳にもいかなかった。そう、車中泊の準備で見逃してしまったのが、この暑い時の『蚊対策』だった。窓を開けた状態で車に装着可能な蚊帳のようなものがないと、窓を締め切るしかないので、車内が暑い時の対策がほとんどなくなる。サンルーフ付きの車にすべきだったか。
☆エアコンをつけられない・窓を開けられない車中泊では暑さ対策がけっこう難しい。
その結果、じっとりと汗をかいていた。昨日は昨日で一度ずぶ濡れになったし、泥の中を走り回ったので、身体が埃っぽい。「そうだ、お風呂に行こう。」となるのに時間はかからなかった。
初日に立ち寄った『花の湯』まで戻るという選択肢もあったが、普通に30~40分くらいはかかりそうで、なかなか遠い。ググって出てきた一番近い銭湯が静岡県富士宮市上井出3470-1にある『あさぎり温泉 風の湯』だった。大人:900円。
そうと決まれば時間は無駄にできない。
一度入るとやたらと出にくい駐車場(しかも戻ると一番奥に誘導されてせっかく並んで確保した場所からめちゃめちゃ遠ざかる)から出て、山道からやや遠ざかり、民家なんぞも見え始めたその時!
視界の端に突如として現れた黒い物体!
急ブレーキ!!!
し、鹿ーーー!!
超びっくり。マジ驚いた。どうやら、右手に小さく広がっている畑から飛び出してきたらしい。畑の奥には、というか、道路以外はほとんど森なのだが、奥の森から畑を駆け抜けて車道を横切ったようだった。
いや、そうね、確かにアレよ、静岡にインしてからというもの、ありとあらゆる道路で、
これは見ていましたよ、見ていましたとも。
見ていたけども、心の何処かで「いやいや、さすがにこのご時世、車道に飛び出してくるほど馬鹿じゃないでしょ鹿だって。鹿だけに。」とか、他人事だったワケですよ。
☆マジで鹿は飛び出してくる。法定速度を守って運転しよう。
しかも、すごく立派な雄鹿さま。奈良でせんべい食いに来るツノのないカワイイバンビちゃんとはレベルが違うでかさ。
これくらい立派だった!胸筋とか!ツノとか!すごかったから獅子神様!(違う)
この時は50kmとか、その程度のスピードしか出していなかったので事なきを得たが、80km以上出している状態で、あの感じで飛び出して来られたらたぶんブレーキは間に合わない。避けるのもほぼ不可能だろう。『動物注意』恐るべし。
そんなこんなで、心臓バクンバクン状態で『風の湯』に到着。午前9時の開店前15分前だったが、既に50人以上並んでいる。考えることは皆同じよね。待ってる間、『風の湯』のWebサイトや立てかけている看板の説明書きなんぞを閲覧し、露天風呂もあるとのことで、なかなか良い設備のようだ。しかし同時に不安も加速する。
入れるのかこれ……?
入口にたどり着くまでに15分、靴箱に辿り着くまで5分、さらにお金を払って入湯券をもらうまでに10分。既にスタッフの方が、「浴場内、大変に混み合っております!」と連呼している。それはそうだろうよ。当然、ふだんはこんなことにはならないのだろう。この二日間だけ、いやむしろ、二日目の朝だけ、この状態なのだろう。
嫌な予感しかしなかったが、脱衣所に踏み込んでみる。狭い。狭いのは間違いないが、もっと足の踏み場もないような地獄絵図を想像していたので、やや安堵する。何とかロッカーを確保し、服を放り込み、足早に浴場に入った瞬間、我は目を疑った。
そこには、壁際に沿って、手持無沙汰に一列に並ぶ男たちの姿があった。
想像してみて欲しい。
裸の男どもが、ブラブラさせながら10人以上も一列に並んでいる様を。
これが2、3人であれば、裸の付き合い!男じゃねーか!ってな感じで、何だか微笑ましい光景にもなろう。もっと場所が広ければワイルドな距離感の立ちポーズで、もっと鍛え抜かれた肉体美が一つでもあればアクセントとして、待つ用の椅子があればサウナっぽい雰囲気も出て、もっと違った男らしい光景になってもいただろう。だがこれは!これはっ!
一般的な銭湯において、洗い場待ちで男どもが十数人並ぶ、などということは想定されていない。壁際の狭い空間にきっちりと前後の距離も詰めて、特に見るべき筋肉もない緩んだカラダの男どもが一列に並ぶその光景は、何かもう中世時代の奴隷制度を象徴した絵画の一部のようであり、圧政に苦しむ民衆の真の姿を風刺した挿絵のようでもあり、決して裸の神々が戯れるギリシア神話の彫刻にはなり得ない物悲しさが、一層その状況を滑稽にしていたと言えよう。
だが、こればかりはどうしようもない。どんな状況であろうと、公衆浴場で身体を洗う前に湯舟に入ることなんてことは、決して日本人にはできない。湯舟はガラガラだ。噂の露天風呂もガラガラだ。それに対して、洗い場は8個しかない(通常であれば十分な数なのだが)。
みんな状況がわかっているので、それなりに急いではくれているが、歯磨きして頭を洗って身体をこすれば、まぁ10分程度はどうしてもかかる。回転率が良くても、20分程度は大人しくブラブラするしかないのだ。銭湯渋滞、ここに極まれり。
こ、これがフェスか。(違う)
一瞬、ひるみはしたものの、僕も列の一番後ろにブラブラさせながら並んだ。ここまで来て身体を洗わずに退散はできない。並ぶ以外に選択肢などないのだ。ここで僕は、一つの真理に辿り着いた。真理の扉の向こう側を覗き込んだ。このシュール極まりない光景を助長させていたのが、『裸の男だけではやることが何一つない』という事実だ。
そう、現代武装を解除した裸一貫の男どもには、行列で順番を待っている間、完全にやることがないのだ。当然スマホをいじることなどできない、傘でゴルフもできない、順番待ちなのでそこから動けない、手持無沙汰にメニューを見たりチラシを見たり看板を見たり商品ラベルを眺めたりすることすらできない。目に映るものは淡白なタイルの羅列と前の人の尻のみ。かと言って、前後に裸で並んでいるため、初見の旅行者同士のように話し掛けるというのも相当やりづらい。
ここには、見るべきものも、語るべきものも、何一つ存在しないのだ。
恐ろしすぎる。
あとで聞いた話によると、女子風呂も同じように地獄絵図だったらしい。
☆朝霧JAMの朝風呂は、少し遠くても『花の湯』にしておこう。
『花の湯』もそれなりに混んでいたとは思うのだが(未確認)、規模が違う。ロッカーの数も洗い場の数も5倍以上はあったと記憶しているし、館内はとても広く、浴衣も用意されているから一時撤退もできるのだ。
10/7(日) 朝霧JAM 二日目 大自然と音楽
そんなこんなで会場に戻り、案の定、入口からかなり遠い場所に駐車を余儀なくされてしまったものの、正式に二日目スタート。
暑い。とにかく日差しの強さが半端ではない。日差しどうこうではなく、屋外キャンプに帽子(キャップ)は付き物らしいが、準備していなかった僕は現地でチャリティーっぽいキャップを購入した。これだけでだいぶ楽になった。女子は日焼け止めが必須だろう。
二日目は太陽の下で大自然を満喫できることもあり、仲間が陣取ってくれた最高のポジションにあるテントの前に椅子を置き、芝生の上で遠くから聞こえてくる音楽に身体を委ねる、みたいな贅沢な時間の使い方をすることが多かった。
青空の下、椅子に全体重を預けてグダ~っとするの、超気持ちいい。
そうして時は過ぎていく。
ちなみに、ご飯関連の写真を撮るのを完全に失念してしまったのだが、立ち並ぶ屋台のご飯は、大体どれも美味しかった。山価格になるのは仕方ないので目をつむるとして、そのへんのお祭りで見られるようなアコギな商売にはなっていないので、単純に食べてみたいものを食べればいいと思う。僕は無類の焼きそば好きなので、一通り味見をして回った後は、延々と『富士宮焼きそば』を食べていた。
前評判などで食べてみたいお店があるなら、一日目に回っておくことをオススメする。二日目の昼くらいからは、人気商品は『売り切れ』の表示が出始め、夕方にはドリンク類も『売り切れ』が始まっていたので、予備的に買っておくことをオススメする。一番近いコンビニまで車で30分。無論、自動販売機なるものは存在しない。会場に屋台があるからと油断していると、踊り疲れたときにドリンクがない、ということになりかねない。
10/7(日) 朝霧JAM 二日目 踊るDJ J.ROCC(DISCO/HOUSE SET)
僕は仕事の関係で二日目の夜20時くらいには静岡を出立する予定だった。
最終日のラストは、レインボーステージが大トリの『JOHN BUTLER TRIO +(ジョン・バトラー・トリオ・プラス)』。そしてムーンシャインステージが『J.ROCC(ジェイ・ロック)』。
時間が丸被りのため、どちらかを選択しなければならない。
初心者的には『JOHN BUTLER TRIO +(ジョン・バトラー・トリオ・プラス)』なのだろうが、一緒に行動していた友人たちは、どちらかというとテクノ好きで、実際にイベントでDJをしている友もいたので、ラストステージは『J.ROCC(ジェイ・ロック)』に決まった。
結論から言おう。
最高だった。
こういうのをカルチャーショックと言うのだろうか。
フェス慣れしている方や、朝霧JAM常連の皆様からすれば「何をいまさら」なのだろうが、音系のクラブに行った記憶などほとんどなく、テクノとかEDMとかからは程遠い場所にいる僕のような人間には、見て、感じるまでは、”それ”を理解するのは非常に難しい。純粋に、見て楽しむ類の音楽というものが、野外ステージでのライブである意味というものが、確実にそこにはあったのだ。
僕にはベースとなっている曲が何かも良くわかっていないので、DJがどれだけ高度なことをしているかなんてわからない。それでも『J.ROCC(ジェイ・ロック)』のステージは、初心者にもわかりやすくエンターテイメント性に富んでいて、曲の途中で機材の前に出てきて後ろ向きでディスクを回したり、ステージ上で華麗なステップを踏んだりと、まるでマジックのステージのようだったのだ。
先人たちは言った。
「ここまですごいのはそうそうない、ディスク代えながら踊るとかフツーは無理なんで」
その瞬間に立ち会えたことを光栄に思う。
☆聴かず嫌いは良くない。
こうして僕の初フェスは、最高の形で幕を閉じたと言えよう。
サバイバルポイント
☆できれば「場内駐車券」を入手しよう。
☆チケットが入手できていようがいまいが、車は早めに抑えておこう。
☆長靴(レインブーツ)は必須中の必須。
☆山に持って行くポンチョは、多少高くてもブランドものがオススメ。
☆車中泊にエアーベッドは使える!サイズに注意。電動ポンプを忘れずに!
☆車で行くなら、カーインバーターを一個は持って行こう!
☆ただし、フェスの駐車場内では、エンジンは付けっ放しにできない!瞬間使用は1分くらいで済ませよう。
☆車中泊ならサンシェードは必須。サイズに注意。
☆椅子は必須とまでは言わないがフェス生活を充実させてくれるアイテム。
☆もしもの場合の紙(トイレ)は、必ず常備しておこう。
☆フェスの醍醐味の一つは、見知らぬバンドとの出会い。
☆例え荷物が増えてしまっても、防寒対策は必須。
☆エアコンをつけられない・窓を開けられない車中泊では暑さ対策がけっこう難しい。
☆マジで鹿は飛び出してくる。法定速度を守って運転しよう。
☆朝霧JAMの朝風呂は、少し遠くても『花の湯』にしておこう。
☆聴かず嫌いは良くない。