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アニメ映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』を観て生身で宇宙空間に出ても生きていられるかを学ぶ

[WRITER] ダクトテープ

ぶたさんの貯金箱が破裂しっぱなしの富裕層はいねえがあああ!

ブルジョアジー!

そんなブルジョアジーの皆様なら、すでに宇宙への投資とか常識ですよね?
アメリカの調査会社によると、2015年の宇宙ベンチャーへの資金流入はなんと25億ドルオーバー
GoogleだってKDDIだって、みんな宇宙、宇宙。
宇宙経済圏とかって、もうハヤカワ用語じゃないんですよ?

 

そんな宇宙時代ですから、ブルジョアジーの皆様は明日にも宇宙へ飛び出しちゃうかもしれない。
つまり、これからはサバイバルも宇宙時代。

 

魂を重力に縛られたサバイバル術では、生き延びることは出来ないのですよ。

 

今回、宇宙時代を生きる皆様にご紹介するのは、ズバリ、宇宙空間で生きていられるか。
どういうことかというと、こういうことです。

 

映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』にこんなシーンが登場するのをご記憶でしょうか?
ここで・・・今さらガンダムのあらすじ説明するのもなんなので、好きなエピソードベスト3を。

 

1位 時間よ止まれ
2位 ジオンの脅威
3位 小さな防衛線

 

3位の「小さな防衛線」は「ジャブローに散る」の流れからが好きです。

 

(例の)ピキーン。
はっ!異論が次々続々と来そうな気配!コメントアウト!

 

さてそんな風に話せばつきないガンダムシリーズにおけるアムロ・レイとシャア・アズナブルの最終エピソードが描かれた映画『逆襲のシャア』に登場するシーンが今回のお題なわけです。

 

シャアはニュータイプ少女、クエス・パラヤを自らの元へ引き取り、利用します。
しかし、ニュータイプ研究所所長で戦術士官のナナイ・ミゲルとクエスはそりが合いません。
ナナイに反発したクエスは自らを慕うギュネイ・ガスの静止を振り切ってノーマルスーツも無しにヤクト・ドーガ飛び乗ります。
向かうのは、シャアの居る小惑星アクシズ。
アクシズでシャアを見つけたクエスは、あろうことか生身で宇宙空間へ出て、シャアのコックピットへ「ナナイを折檻して!」と飛び込んだのでした。

はい、ここに注目。

 

生身で宇宙空間に出た?

 

ニューガンダムがアクシズを押し返す方向とともに、長年ツッコまれ続けてきたシーンです。

 

「逆襲のシャア」のこのシーンを参考に、生身で宇宙空間に飛び出てサバイバルできるのかについて、宇宙経済圏に生きる皆様のために検討してみましょう。

 

 

まずはガンダム世界における認識から。
まず、クエスのシーンの直前に、ハサウェイがノーマルスーツを着ていないことを「窒息したいのか」とたしなめられるシーンがあります。

また、テレビシリーズでも、ララァがシャアに対してノーマルスーツを着て欲しいと願うシーンがあります。
いかにガンダム世界といえどもノーマルスーツを着なくてもウエルカムムードなのは、たぶんドレンだけの模様。

 

では、実際はどうなんでしょうか。
まずはもっともイメージしやすい

 

宇宙=真空=窒息

 

という観点から見ていきます。

 

映画「2001年宇宙の旅」に、HALによって閉め出されたボーマン船長が間一髪でエアロックからディスカバリー号へ戻るシーンがあります。
ここのシーンで、ボーマン船長は13秒ほどヘルメット無しの状態で真空中で活動しています。

 

このボーマン船長のシーンの根拠となっていそうな事故が、アメリカで現実に起きています。
1965年、訓練中だったNASAの宇宙飛行士の宇宙服が空気漏れをおこし、真空中にさらされてしまったのです。
宇宙飛行士は無事でしたが、舌の上で唾液が沸騰するのを感じたそうです。
この事故で、宇宙飛行士が真空にさらされた時間は14秒間でした。

 

訓練中でなく、ガチミッション中に起きた事故の例も確認しましょう。
1971年、ソ連のソユーズ11号の帰還モジュールのバルブの故障から空気漏れが発生。
当時の帰還モジュールは宇宙服を着て乗り込むことは出来ませんでした。
結果的に宇宙飛行士は全滅。
レコーダーの記録によると、宇宙飛行士達は10秒で朦朧としだし、30秒で行動不能、50秒後に死亡したと見られています。

 

これら事故の教訓から、真空中でもごくごく短時間なら生存できる可能性があると言えそうです。

 

続いて、宇宙空間に生身で出た際の真空以外のリスクは何でしょうか。

 

 

まず、低温。
宇宙はマイナス270℃という、毎朝スタジオパーク前で中継するお天気お姉さんの言葉に一喜一憂する自分からしたら気が遠くなるような低温です。
ですが、宇宙空間には人体から熱を奪う媒体がないので、急速冷凍されちゃうことはないようです。
なので、低温もセーフ。寒いけど。

 

やや深刻そうなのは、宇宙放射線。
国際宇宙ステーション(高度400km)で活動する宇宙飛行士の被爆量はだいたい0.5~1mSv/日。
地球にいるときの一年分を一日で浴びることになります。
船外活動の被爆量は計測中ということです。

 

宇宙には太陽フレアという現象もあり、これが起きると放射線量があがります。
かつて、ソ連のミールが観測した太陽フレア時の放射線量値は、被爆時間は不明ですが船内5mSv、船外30mSvだったそうです。

太陽フレアといえば、紫外線も心配だなあ・・・ごにょごにょ。

 

これはもう総本山であるNASAにまとめて聞いてみましょう。
ということで、NASAのなぜなにコーナーをのぞいてみると・・・

 

教えて!天文先生コーナー(意訳)
https://imagine.gsfc.nasa.gov/ask_astro/space_travel.html

 

そのものズバリな質問がありました。
「How would the unprotected human body react to the vacuum of outer space?」
生身の人間の身体は宇宙の真空でどうなりますか?

 

この質問への回答がこんな感じ。


If you don’t try to hold your breath, exposure to space for half a minute or so is unlikely to produce permanent injury. Holding your breath is likely to damage your lungs, something scuba divers have to watch out for when ascending, and you’ll have eardrum trouble if your Eustachian tubes are badly plugged up, but theory predicts — and animal experiments confirm — that otherwise, exposure to vacuum causes no immediate injury. You do not explode. Your blood does not boil. You do not freeze. You do not instantly lose consciousness.

・息を止めたりしなければ30秒くらいは後遺症にはならないだろう
・息を止めたら肺を痛める恐れがある
・耳の鼓膜のトラブルがあるかもしれない
・理論上また動物実験の結果からも、生身で真空中に投げ出されても、すぐに怪我するわけではない。身体が破裂することもないし、血液が沸騰することもないし、凍ることもないし、瞬時に気絶することもない

 

Various minor problems (sunburn, possibly “the bends”, certainly some [mild, reversible, painless] swelling of skin and underlying tissue) start after 10 seconds or so. At some point you lose consciousness from lack of oxygen. Injuries accumulate. After perhaps one or two minutes you’re dying. The limits are not really known.

・その他のマイナートラブル(日焼け、潜水病、皮膚の深層部の腫れなど)は10秒前後で始まる
・ある時点で、酸欠により気絶する
・損傷は蓄積される
おそらく一、二分後から死・・・
・限界は本当はわからない

 

そして、この質問への返答も見てみましょう。
「What danger does solar or cosmic radiation pose to astronauts?」
太陽や宇宙放射線が宇宙飛行士に与える危険性は?

The ultraviolet (UV) radiation from the Sun (without our protective ozone layer and atmosphere to protect us) would be enough to rapidly give you sunburn, melanoma, etc. However, unless your spacesuit or spacecraft windows are specifically designed to let UV pass through, enough will be blocked that you don’t have to worry about it too much. (If you are in space without a spacesuit or spacecraft, then you’ve got bigger problems than radiation.)

・オゾン層がない状態での太陽からの紫外線は、日焼け、悪性黒色腫のおそれがある
・普段はそんなに強く気にしなくていいレベル
・ただし、宇宙服・宇宙船無しで宇宙にいたら放射線よりもまずい

 

When the Sun flares, it produces x-rays, gamma-rays, and energetic particles. The energetic particles are the worst, but they are delayed compared to the X-rays and gamma-rays, so you have some warning that they are coming. This gives you time to get into a ‘storm shelter’, a well-shielded area that you can live in for a few days until the particles die down.

・ 太陽フレア太陽フレアが起こると、X線とγ線、エネルギー粒子が発生します。
・エネルギー粒子は危険ですがx線やγ線に比べて遅いので警戒でき、この間にシェルター(粒子の嵐が止むまで数日過ごせる)へ入ることが出来る

 

If you don’t have a storm shelter (e.g. if you are out moonwalking in just your suit) a bad solar flare can kill you by radiation sickness.
・しかし、エネルギー粒子の嵐を避けるシェルターが無い(月面を宇宙服で歩いてるなど)の場合、放射線障害で死に至る

 

いかがでしょうか。
まとめると、だいたいこんな感じでサバイバルできそうです。

 

・宇宙空間に生身で出ても、10数秒なら大丈夫
・ただし息は止めないこと

 

クエスのシーンは時間的にも問題なさそうです。
問題があるとすればナナイの折檻シーンがないことでしょう。

 

ただし10秒前後で・・・
・気絶する
・日焼けなどのマイナートラブルが始まる

 

さらに
・損傷は蓄積される
・紫外線はこわい
・太陽フレアはまずい

 

・・・といったところでしょうか。

 

何も宇宙空間を江田島平八的な意味で遊泳するご予定がなくとも、宇宙へお出かけの際の予備知識としてお役立てください。
カーボンナノチューブの軌道エレベータの視察とか!

 

というわけで、ダクトテープは宇宙投資されちゃうブルジョアジーな富裕層の皆様をサバイバル的側面から応援します。

 

You belong to me サヨナラ言えなくて~

サバイバルポイント

宇宙空間に生身で出ても、10数秒なら大丈夫!(ただし息は止めないこと!)
映画みたいにカラダが破裂したり、血液が沸騰したり、一瞬で凍ったりはしない。