冬ですね!ネコでコタツで犬で喜びで庭駆け回る、んでもってスキー!の季節ですね!
普通かっ。
僕は通常体温は35.9度とかで冷血人間なのですが、冬が嫌いです。
体温が常時低いからか、比較的薄着で過ごせるので寒さには強い方だと思うのですが、冬が嫌いです。
何というか、夏の太陽にはちゃんと殺意があって、攻撃もわかりやすいし、闘い方もはっきりしてるワケじゃないですか?圧倒的な攻撃力があるので、能力を隠しもせずに攻め込んでくる潔さを感じます。敵ながらアッパレ。
でも冬の寒さには、こう、明確な殺意はないけど事故死を狙っているようなところがあって、防御しかできないとゆーか後手に回るしかないとゆーか、じわじわと嬲り殺しにしてくる感じ?がとても腹が立つワケです。
この感覚、わかります?そーですか、わかりませんか、君とは友達になれないみたいだ。よし、次に進もう。
雪も積もり始めると、シーズン到来!
スキーにスノボに神様にロマンスをお願いする、そんな季節なワケですが。
スキーやスノーボードの、あの「滑る」という感覚は受験生とお笑い芸人以外には爽快以外の何ものでもなく、関東に住んでいるとちょっと行くのがめんどくさいけど、冬のスポーツの定番になるのも頷けます。
そんな中、どうしてもこう、慣れない場面があります。
それがリフトの乗り降り。
スキー場のリフト、ドキドキしますよね。初心者にとっては最初にして最大の難関でもあります。
乗るときはタイミングが「速くない?あいつ速くない?」と焦っているのに、係員の人が笑顔で背中を押してくるから心の準備もそこそこに特攻状態になる上、なかなか強烈にケツに激突してくる奴もいます(スキー場にもよりますが)。
降りるときは「ちょ、やめて押さないで、降りるから!いま降りるから!」って言ってるのに一切の躊躇も容赦もなく「もうお前とはお別れだ、俺には他に待ってる奴がいるのさ」と振り落としてくる始末。例え転んでも、素知らぬ顔してUターン。「このドS!!」って言いたくなりますよね?なりますとも。
そんなリフトに足をブラブラさせながら乗っているとき、誰もが一度は考えたことがあるでしょう。
これ、途中でリフト止まったらどうすんの?
意外なほどの速度(一般的なペアリフトで時速にすると7kmくらいらしい)や高度にビクビクするのもそうですが、リフトがガクゥンとなったときが、なかなかの恐怖の瞬間。まぁたいていは、誰かがリフトの乗降に失敗して一時停止になったくらいで、1分もせずに再開します。
しかし、だ。
仮にリフトが完全停止し、動かなくなった場合、
空中で止まったリフトからの脱出は可能なのか。
『答えは雪に聞け。』
と言いたいところですが、もしもの場合にサバイブするために、自分がとるべき行動は、予め考えておかないと、けっこう取り返しのつかないことになるなぁ、と思った映画があります。
【※ネタばれ&グロ注意】
さて今回取り上げる作品は、
『FROZEN(フローズン)』
2010年製作のアメリカの自主映画で、第36回サターン賞でホラー映画賞にノミネートされた作品です。
『FROZEN』言っちゃうと、アナ雪?アナ雪なの?ともなりかねませんが、そんなメルヘンなお話はさばい部には出てきません(『アナと雪の女王』は原題が『frozen』)。位置付けがホラー映画、スリラー映画なので、お子様にはツライ場面が続きます。
ダン、ジョー、パーカーの大学生3人がスキー場でリフトを待っているところから映画は始まる。ダンとジョーは男友達の親友、パーカーはダンの彼女という、3名パーティで一番やってはいけない組み合わせでスタート。最初から嫌な予感しかしない。
陽も落ち、スキー場が閉店する頃、3人はもうひと滑りしたいと係員に懇願してリフトに乗せてもらうも、係員のすれ違いと勘違いから、リフトは電源を落とされてしまう。
3人は地上15mの山腹で3名用リフトに乗ったまま空中停止してしまい、スキー場に取り残されてしまうことに。
その日は日曜日、次にそのスキー場が運営するのは金曜日。5日後まで助けは来ないかもしれない!?
既に夜で気温も下がってくる。吹雪も強さを増してくる。さぁどうする!?
はい、そのまんまのシチュエーションです。
公開時のキャッチコピーは、
『もうスキー場に行けない。』
という若者のスキー離れをさらに加速させそうなアンチJR SKISKIで、なんだか不安になるコピーでした。
今回のサバイバル術は、ストーリー自体に言及しないとどうにもならないので、完全にネタバレします。
ちょっと興味が湧いてしまった方や、自分で考えてみたい方は、先に映画を観ることをオススメします(現時点では、huluで観られます。Amazon Primeでは観られません)。
「この一瞬を切り取ったか!」
「ああー、確かにこの判断はしちゃうかも」
「この状態になったら精神的に耐えられん」
などなど、ファンタジーなしでリアルな恐怖を切り抜いていて、個人的には、登場人物に超人性を与えず、主人公を凡人として描き切っているところが非常に好みですが、映画としてすっごい面白いかというと、賛否は分かれそうな作品で、「是非見てください!」というものではありません。ここで観た気になってしまうのも一興です。
こういうシチュエーション系の映画って、すぐに状況設定が無理だとか、偶然過ぎるとか、結局運じゃん、とか突っ込まれる運命(さだめ)なんですが、有り得ないから、予測できないから、パニックになって判断ミスをするのであって、現実感で考えちゃ駄目なんです。
ツッコミをぐっとこらえるのが礼儀
です。それはもう、起こったこととして受け止めましょうよ。ありのままの姿を見せましょうよ。
さて。
まずは状況を整理します。
・成人男性2名(ダンとジョー)、成人女性1名(パーカー)
・3名用のリフト(落下防止バーあり)に3人で座っている
・停止時刻は夜の21時
・全員、携帯電話なし
・地上15mの高さ(台詞がないので推定)
・停止したあたりから軽く吹雪いてくる
・夜の気温は最低-20℃程度(台詞がないので推定)
・ダンとパーカーはスノボー装備、ジョーはスキー装備
・停止した箇所から麓までの距離は不明だが、描写からの推定で2~3km程度だと思われる
この状況。
今どきの若者が携帯電話を手放すなんて!とかいうツッコミからもう禁止。持ってなかったものは持ってなかったの!雪山で電波がつながる可能性は低いし、携帯電話で助けを呼べたら、この物語は生まれなかったの!受け止めるのだ、ありのままを。
では3人がこの状況下で試したことをストーリーと共に見ていきましょう。
①ひとまず現実逃避しながら対策を3人で考える
当然、3人は、この状況について考え、対策案を出していくが、まとまらない。そのうち完全に夜になり、吹雪いてくる。
▼人数のバランス
3人というのは、なかなか厄介な人数だ。意図せずとも、一人が除け者になりやすい。一人が悪者になってしまうと、イジメが生じる人数でもある。2人の場合は、互いに助け合うしかないので収まりがいいが、戦力として弱い。ベストなのはやはり4名で、男女比も同じが統括しやすい。パーティは常に偶数が良いものだが、6名になると、意見が揃わなくなる。
▼意見の対立
これは当然だ。対策案は多い方がいい。「助けを待つ派」と「行動して切り抜ける派」で意見が分かれるのは当たり前のことなので、そこで熱くなってはならない。
② 通りかかった雪上車に気付いてもらおうとする
偶々、リフトの下を雪上車が通りかかったので、3人はそれぞれに叫びながら、帽子やスキー板、ストック、スノボー板など、物を投げたが、運転手が後ろを向いていて気づいてもらえず、やはりそのまま置き去りに。まともに助かる唯一のチャンスを華麗にスルー。タイミングと運の悪さが際立つ一瞬。結局手元に残った装備は、スキー用のストック1本だけだった。
▼防寒具を失うのは危険
このときにパーカーが手袋を投げたのが、結果として裏目に。これが原因で素手がバーに張り付いてしまい、肉ごとベリベリはがすという痛々しいシーンにつながる。
▼物を投げるときは冷静に
あとで後悔することになる内容が多いシーンなのだが、物を投げる以外に気付いてもらえる方法はほぼなく、ギャンブル必須な状況ではある。ただ、事前に誰かが通った時に気付いてもらう方法は考えておくべきで、投げるからには、もう少し冷静に、何を何処に投げるか、体勢を整えてしっかり狙えていれば、というところだった。
③ 再検討。助けを待つか、降りる努力をするか。
営業再開が5日後という設定が、ここで効いてくる。ただ待つだけには、なかなかに絶望的な期間。先刻の華麗なスルーも、じわじわ効いてくる。助かるチャンスを逃したことで、ネガティブ思考が先行するのは当然、本当にこのままでは助からないのでは?という恐怖が満ちてくる。
④ ダン、飛び降りる決断をする
待っていたら死ぬかもしれないという恐怖の方が勝ち、ダンは「行動して切り抜ける」ことを選択。パーカーとジョーが必死に止めるが、それでも敢行を決意。多少の怪我をしても、麓まで降りられればOKという考え。パーカーに「君を助ける」と約束。飛ぶ瞬間には、正直に「怖い」と吐露しながらも、助かる道はこれしかないと信じ、リフトから身を躍らせる。
結果、両脚を開放骨折して、失敗。
お、おおおおおぉぉぉ
なかなかに衝撃的な描写。痛い、もう痛すぎる。
両脚とも脛骨(スネの骨ね)が膝のあたりから皮膚を突き破って露出してしまい出血、意識はあれど、完全に身動きがとれなくなる(心臓の悪い人は見ちゃダメ)。
▼15mからの落下の衝撃に人間の身体は耐えられない
地上からの高さは約15m。ビルやマンションで考えると3~4階くらいか。スキー場なので雪が積もっているとは言え、積雪の高さが3mとかでもない限りは、飛び降りて無事でいられる高さではない。それはダンもわかっていたが、負傷レベルの予想が完全に下回っていた。普通に考えれば無理なのだが、普通に考えられないのがパニック状態。
ただ、この判断はそう見当違いなことではない気もする。判断を狂わせるだけの要因は十分にあったのだ。
1.【焦り】
地上へのジャンプは、成功さえすれば、それこそ一発で問題解決、つまりは恐怖から一瞬で逃れられるという魅力があった。他に選択肢がほぼないのも確かで、それに賭けるしかないという結論に至ったのも、頷ける話ではある。しかしこれ、確率の問題ではない。賭けにすらなっていない。何度やっても、足から行けば両脚は折れるだろう。
2. 【地上一面が雪】
ものすごく積もっているようには見えなかったが、やはり雪であれば、ある程度衝撃を吸収してくれそうな期待がある。しかしこれは、積もっているように見えても相当危険だ。雪の下に岩があるかもしれないし、凍っている可能性だってある。仮にふわっふわだとしても、15mからの衝撃を全て雪でカバーするとなると、3m以上が必要だ。そもそも、仮に3mあったとして、3m身体が埋まったら、そこからの脱出が困難になる。
雪に全身埋まったことがあるだろうか?僕は子供の頃、北海道が田舎だったので、家屋の2階から積もった雪に良くダイブしていた。家全体が埋まるくらいは普通に積もるのだ、北海道は。所詮は子供の体重なので、そこまで深くは埋まらないが、プールみたいな感じで足から垂直に行くと、首くらいまではずっぽし埋まる。こうなると、自力では抜け出せない。周りからすれば超迷惑だ。なので、横向きにダイブしていた。幸い、それで怪我をしたことはないのだが、やるたびに「雪の下に何があるかわからないからヤメーや!」とメチャメチャ怒られたのは今でも覚えている。
また、地面が広範囲で真っ白だと、単純に距離感が狂う。そこまでの高さを感じないのは確かだろう。
それに良く言うではないか、ゲレンデには正常な感覚を狂わせる魔物が住んでいると。これも一種のゲレンデ・マジックなのではないかと。
3.【肉体の耐久度理解不足】
ある意味では、この15mという高さは絶妙な設定だ。マンションの3階の高さと聞くと「大怪我間違いなし」、4階と聞くと「さすがに死ぬかなぁ?」、5階だと「絶対死ぬ」くらいの感覚だろうか。地面がコンクリなら3階でも死を連想するが、雪だと聞くと、確かに絶対に不可能とは言い切れない気がしてくる。これがそもそも30m、8階相当だったら、飛び降りるという選択肢自体がないだろう。
実際にはどうなのか?
打ちどころが悪ければ、というか、頭部を強打するとか、頸骨(クビの骨ね)が折れるくらいの衝撃があれば人間は死ぬので、1mだって2mだって、何なら0mで倒れただけでも死ぬワケだが、衝撃に耐えられるという意味合いで言うと、
飛び降りてもまず大丈夫な高さは、5m程度
だと言われている。
故・尾崎豊はライブ中に7mの高さから飛び降りて左足を骨折しているが(そのまま歌い切った)、5m以上から、徐々に人間の肉体は落下の衝撃に耐え切れなくなってくるといったところだろう。
ちょっと嫌な話になるが、雑学的な一般論で言うと、飛び降り自殺含む落下事故で
生存率が高いのはマンションの4、5階まで。
25m、7階以上になると、急激に生存率が下がる。
どう落ちようがまず間違いなく死ぬだろう高さでいうと、35m、10階以上。らしい。
人間の肉体や生命は自動車の衝撃テストみたいに数値化できないので、このへんは明確に定義されている数字がないのだが、これまた雑学的な一般推論で行くと、おそらく20mを超えると、死にはしなくても重大な損傷を負うはずで、落下後に自分で動くことはまず無理だろう。
そのレベル感での15m、地面が雪(土)だとすると、奇跡に賭けてみたくなるのもわかる気がする。
ダンはスキーブーツのままリフトに座った状態で垂直に飛び降りた。真っすぐ両脚から行けば、全ての衝撃をダイレクトに両脚だけで受けることになる。両脚が開放骨折したのは、まさにこのためだと言える。
しかし、この体勢以外でダイブした場合は、頭部や頸骨にダメージが行く可能性があり、死の確率が高くなる。結果的に、ダンは最も死ににくい方法で飛び降りたことにはなり、それで両脚を失っているのだから、目的から考えると、やはりこの選択自体が間違っていたと言わざるを得ない。
4.【リフトの魔力】
僕は長野のスキー場にしか行ったことがないのだが、上級者コース(ノリで行ったことを死ぬほど後悔した)のリフトともなると、傾斜角度が上がるということなので、メチャメチャな高さになる。目算で、おそらくアレが15~20mくらいかなって思い当たる高さがあるが、心の何処かで「飛び降りたらどんな感じなのかな?……かな?」という『高いところに立つと何もかも忘れて飛び降りてみたくなる症候群』が発症し、不思議な誘惑みたいなものがあって、妙な気分になることがあるのは確かだ。え?ない?うそマジで?
5.【彼女と一緒だった】
ダンにとっては、何よりこれが致命的だったと思われる。
これが一人か、男二人だったら、ダンはもうちょっと臆病でいられたはずなのだ。人間は不思議なもので、自分以外の誰かのことを考えた時の方がパワーが出る。実際にパワーは出るのだが、己の限界以上のパワーが出ると勘違いもしてしまう。
ダンは、決して「彼女にいいところを見せたい」といった軽薄なノリではなく、確かに彼女を助けたいと思った上での決断だった。
だが僕らはアメコミのヒーローではない。少年ジャンプのヒーローでもない。能力は平等にモブ並みなのだ。
⑤ ダン、狼に食われる
ダンの悲劇は終わらない。
両脚を骨折したダンのところに、血の匂いを嗅ぎつけた狼がやってくる。最初の一匹は追い払ったものの、次は複数での襲撃。身動きすらとれないダンにはどうすることもできない。頭上でパーカーとジョーが叫び続ける中、ダンの断末魔は聞こえなくなる。
▼山の中での出血は禁物
アメリカならではの展開だが、血の匂いが野生動物を呼び寄せる。血を流しているということは、弱っている証拠だ。日本には狼もコヨーテもいないので、こういう襲われ方はほぼないだろうが、キツネとクマーはいるはずので、やはり出血はしないように細心の注意を払うべきだろう。まぁ、キツネが人間を襲ったという話は聞いたことないが。
⑥ ジョーとパーカー、一夜をリフトの上で眠って乗り越える
ダンの最期を見届けて二人で泣いた後、そのまま二人はリフトの上で眠ってしまったようで、朝日でパーカーが先に目を覚ます。凍傷で顔からは出血しており、右手の平が安全バーに張り付いていて離れない。それを痛みに堪えながらベリベリと引き剥がすパーカー。
▼防寒さえしていればそう簡単に凍死はしない
エベレストの頂上付近ともなれば別だが、人間がスキー可能なくらいの標高の雪山では、氷点下の最低になっても-20℃がいいところだ。通常時は、大体-6℃とかそんなもの。
-20℃というと、一般的な家庭で使われている冷蔵庫の冷凍室が、それくらい。北海道も、寒い日はそれくらいまでは下がる(旭川は-41℃という記録を持っている)。良く、サスペンスとかで業務用の冷凍室に閉じ込められた人がカチンコチンになっているシーンがあるが、あれはまぁ、業務用なんで-50℃とかだとしても、全身水浸しにして放り込みでもしない限り、そんなに簡単に生きている人間はカチンコチンにならない。
そもそも凍死とはどういうことか?
当然、「凍え死ぬ」ことではあるが、その過程は、体温が下がり、低体温症が進行し、最終的に心臓の活動が停止した状態のことを指す。
人間の肉体は、ほぼ体温によって全機能を支えていると言っても過言ではない。体温によって出てくる障害は下記。
体温36℃:寒気を感じる、やや血流が悪くなる
体温35℃:ふらつく、手先などに機能障害が出始める
体温32~30℃:立てなくなる、意識障害が出始める
体温28~26℃:昏睡状態、心臓停止
体温そのものが下がる、という状態は、常に熱を発散している機能が低下するか、そもそもの体温調節機能を上回るくらいの低温に接したときに起こる。
当然寒ければ寒いほど体温が下がる要因にはなるが、そもそも低体温症は、気温に関わらず起こる。極端な話、例え夏でも、急に冷え込んだ日に裸で公園のベンチで寝ていたら、凍死しかねないのだ。
つまり、外気がどれだけ低かろうが、ちゃんと防寒さえしていれば体温は保つことができるので、-20℃でも簡単に凍死することはない、ということだ。
これもまた、状況や体調、個体差によって大きく異なり、人間での実験が不可能なため、事例からの類推と雑学的な一般論でしか語れないが、真夏の恰好で-20℃の冷凍室でも、身体が濡れていなければ2~3時間は何とか行ける模様なので、スキーウェアを着こんでいれば、夜明けまでの8時間程度なら、まず大丈夫だろう、という根拠で、ジョーとパーカーは生きていたのだろう。
この状況下で最も注意すべきなのは、
汗をかかないこと、だ。
氷点下では、汗をかくと急激にそこから冷えて、熱を奪われる。場合によっては凍ってしまい、さらに熱を奪われる。寒いからと言って、無闇に運動して汗をかいてしまうと、まったくの逆効果になるということだ。これは知らないとやってしまいそうで怖い。
乗り越えられるとは言っても、そう長くは持たない。
雪山であれば水分は何とか確保できるとしても、カロリー摂取ができないと、熱エネルギーを作れなくなってくるため、時間が経てば経つほど、衰弱によって低体温症発症の危険性は高まってくる。また、眠ってしまうと、それだけで体温は下がるので、凍死への道のりが開けてしまう。遭難時に「眠るな!死ぬぞ!」と言っているのはそのためだ。体力が落ちてくると、危険な状態に突入するのは間違いない。
ちなみに、水中の場合は、浸かっているところ全てから熱を奪われるため、空気の約25倍の速度で低体温症が進むらしい。5℃の水中で1時間が生命の限界とのこと。
▼素手で金属を掴むのは危険、強引に引き剥がさない
雪上車に気付いてもらうために手袋を片方投げてしまったため、パーカーは右手が素手の状態だった。いつの間にか安全バーを掴んだまま眠ってしまったため、手痛いダメージを負うことになる。
氷点下で、生身の皮膚と金属との間に水分がちょっとでもあれば、それはすぐに凍りついてしまう。素手で金属に触れないようにするのが大前提だが、張り付いてしまっても、強引に剥がせば皮膚も肉も抉れてしまうので、太陽が出ているのなら気温が上がるまで待つべきだ。接着部分が溶ければ、自然にとれる。
⑦ パーカー、着衣で座ったままおしっこをする
ここをちゃんと描いたのは素晴らしかった。何であれ、生理現象は起こるはずで、ジョーの前で服を脱ぐ訳にも行かず、ジョーが寝ている間に、こっそりと処理をしたのだ。このあと、シクシクと泣くパーカーが切なすぎる。
▼「カラダを濡らす」はNG
恋人ではない男女だとかなりキツイだろうが、生存率を上げるためには、着衣のままの排泄はオススメできない。氷点下の世界では、水分はすぐに凍ってしまうし、身体が濡れると、そこから体温を奪われる。この場面では、朝日が射していて気温も上がっていただろうから大問題にはならなかったようだが、「カラダを濡らす」は、超危険な行為だ。
⑧ ジョー、リフトの支柱まで懸垂で進む
一夜明けて起きたジョーは、「ダンのためにも助かって見せる」と決意し、リフトを吊るしているワイヤーを伝って、支柱まで行き、そこからハシゴで降りるという策に出る。飛び降りるのが無理なら、当然に思いつく次の手だ。リフト同士の間隔は約10m、途中で一つ別のリフトを挟んだので、支柱までは目算距離で約20m弱だろうか。
決死の覚悟でワイヤーを掴むジョー、このときの衝撃で、乗っていたリフトのネジが緩んでしまい、大きく傾く。パーカーも大ピンチ。何とかセーフ。
パーカーが見守る中、腕力だけの懸垂で進むジョー。しかし掴んでいるのは極太の鉄のワイヤー、手袋は裂けてしまい、手の平の肉も抉れてしまう。それでも、ジョーはやり切った。支柱までたどり着くことに成功する。しかしそこに、おそらくダンを食らった狼どもがワラワラと集まってくる。
▼腕力だけの懸垂で20m進めるか
完全にSASUKEである。正直、マウスよりも重いものを持ったことがない僕にはこれは厳しい。けっこうな体力と腕力、握力が持続的に必要だし、力尽きればそのまま落下だ。
最近は雲梯(うんてい)とか見かけないが、空中にぶら下がりながら、腕だけで前進するという行為は、とてつもない体力を使う。やったことがない人は本当に注意だ。そんなに簡単なものではない。
ボルダリングをやったことがある人ならわかると思うが、握力というものは、思っているよりも一瞬で尽きる上に、一度尽きると回復までに時間がかかり、自分の意志でどうこうできるものではない。気合いじゃないのだ。
僕が初めてボルダリングに挑戦したときは、半日コースで楽しもうと思っていたのだが、僅か2回、中級コースをやっただけで、もう握力が利かなくなった。30分休んでも握力はほとんど戻らず、握力がなければもう登ることができないので、遊びようもなく2時間で退散した……。
ちょっと僕が弱すぎるのもあると思うが、一般人の握力なんて、こんなものだ。単純な握力で言えば、僕でも左手は70kgあるが、それは瞬間的なものに過ぎない。進む距離が5mならまだしも、20mとなると続く気がしない。女性なら、なおさら厳しいだろう。
しかしこの策は、飛び降りることができないなら、実行に移すべき策だ。ただ、もうちょっと頭を使ってリスクヘッジしたい。
ここでスノーボードが残っていれば、それが一番使えたはずだ。
そもそもリフトは上がるもので、ワイヤーには傾斜があるはずなので、構造的にはワイヤーの上を滑れる、はずだ。
・ワイヤーの上にボードを直角に置き
・ブーツを止めるところを下から両手で掴む
・留め具もあるから手首まで入れれば、かなり強力に固定できる
これで滑空準備完了だ。これなら握力はほぼ必要としないし、ワイヤーに直接触れないので怪我も防げる。
うーん……文章だと表現が難しいな、今ので伝わっただろうか?
なんか似たようなシーン、似たようなシーン……ああ!
ナウシカがさ、メーヴェを下から掴んでぶら下がってるシーンあるでしょ?上に乗るんじゃなくて。あれ、あの感じ。
い、いやあったかな、そんなシーン……画像検索で出てこねぇ……原作の方かな?ま、いいや。とにかくそんな感じ。
仮に上手く滑空できなくても、振り子式で進めるはずので、腕力で進むよりは遥かに体力を使わないだろう。
スキー板やストックでも、原理的には同じことができるが、成人男性一人の体重は支え切れないと思われる。これはスノーボードでしかできない。
⑨ ジョー、スノボーの板をソリ代わりにして山を下り始める
地上に辿り着くや否や、狼の群れに襲われるジョー。ストックで狼を攻撃しつつ、放り投げてあったスノボーの板に辿り着き、装着している余裕はないので(というか、ジョーはスキーの装備なので装着できない)、ソリ代わりにして山を下り始める。「待ってろよパーカー、すぐに迎えに来る!」。その後を、超元気に狼がダッシュで追っていく……嫌な予感しかしない。
⑩ パーカー、行動する
3日目の朝。目覚めるパーカー。ジョーは帰ってこない。
幾ばくかの逡巡の後、パーカー、ついに自ら動き出す。もうダンと同じ結果になってもいいと思い始めたのか、リフトから飛び降りるような素振りを始める。ワイヤー懸垂はさすがにパーカーには難しい。
そのとき、リフトとワイヤーを接続していた滑車部分のネジが外れ、リフトが落下。途中でリフト側のワイヤーが引っかかり(仕様なのか偶然なのかわからん)、落下途中で止まる。必死にリフトにしがみつくパーカー。
イッツ・ミラクル。十分に飛び降りられる高さでリフトは止まっている。パーカー、ジャンプ。落下してきたリフトで片足をやられるものの、地上に降りることに成功。
⑪ パーカー、生き残る
体力は限界、片足はおそらく骨折している状態のため、まともに歩けないパーカーは、血まみれの両手で雪をかき分け、這いつくばって、斜面を滑り降りるようにして下山を開始する。
その途中。三度(みたび)、狼、現る。
近距離で狼と視線が合うパーカー。狼は、パーカーのことはさほど気にしていない模様。ふと見ると、狼の群れは、ジョーを食べるのに夢中だった。
無残に食い荒らされているジョーから視線を切って、パーカーはそっとその場から離れていく。
車道まで辿り着いたパーカーは、通りがかった車の運転手に助け起こされ、一命を取り止めた。
はい、これで完全網羅です、ストーリー。
おそらく、3人は僕らが思いつくようなことはそれなりに試してくれたと思うんですよ。岡目八目な僕らは、冷静に是非と可否を見極めればいいだけなのです。そして二人の犠牲の上に、ドヤ顔で更なる打開策を追加していくのです。
それにしても。
狼、ゴリ押しすぎない?
あ、え、いやいや、違います、今のはツッコミじゃないですよ、違いますって。ただの心の声ですからね、いいですね?
いますよ、狼くらい。アメリカだもの。
素晴らしかったのはですね、最初から死亡フラグはビンビンにジョーに立っていて、カップル二人のお邪魔虫という扱いなのに、最初に死ぬのが男気を見せた彼氏のダンなんですね。しかも、両足を開放骨折した挙句、彼女の真下で狼に食われるという、なかなかのスペシャルコース。狼に食われているときも、「フッ、これが俺の運命か……」とかならないワケですよ、どうにもならないのわかってるのに、「助けてくれぇ!!」って叫んでしまうあたり、かなりリアルでした。
エンターテイメントなしで考えると、確かにこれが普通の流れかもしれない、と言わざるを得ないんです。
そして次に犠牲になるのが、やはり男気を見せたジョー。
軽口キャラでネガティブ思考だった彼が、ダンの死をきっかけに立ち上がったと思ったら、ソッコー狼の餌食です。
男気を見せた奴から死ぬ。
この世界観、たまらん。
生き残ったのは、最後までほとんど何もしなかったパーカー。仕方ないと言えば仕方ないですし、別にパーカーのせいで二人が死んだワケでもないんですが。
「10%の才能と……20%の努力……30%の臆病さ……残る40%は……運だろうな」
この映画を観終わったときに、真っ先に浮かんだのがこの言葉です。
かのゴルゴ13が、殺し屋のプロとして成功する秘訣を訊かれたときの台詞です。
完全にこれやん。
男気なんてね、1%もないんですよ。
運と臆病さで70%、ほぼほぼ結果決まっちゃうんですよ。
これ、ほんと絶妙な配分なんですよね。
才能が必要ないとは言わない、才能よりは努力の方が大事、それよりも遥かに臆病さを持て(蛮勇などクソだ、と言っていると思われる)、ただ結果は運の要素もでかい。
この配分だと、才能の有無を言訳にはできないし、決して努力を怠ることもできない割合なんですよね。運の割合はかなり大きいけど、半分以上は自分の問題になるので、結局は運のせいにもできない。
これこそ、サバイバルの本質である気がする。
ゴルゴ、ってゆーか、さいとうたかを先生、マジですげーなと。
まとめ
さて。
各シチュエーションについて、調査や考察なども挟みましたが、ベストな結論はこうです。
動かず、二日までは助けを待つべき。
なるほどつまらん。
いやいやいやいや。
実際ですね、これが一番確実です。
言ってしまえば、携帯電話は持ってようね!が正解なんですが、さすがに電波状態はかなり悪いでしょうし、壊したくないからロッカーに置いてきちゃう人もいるはずですので、使えない前提とした場合です。
少なくとも、日本でこのサバイバル事案が発生した場合は、助けを待つのが、どう考えても最も生存率が高いでしょう。
常に-20℃なんて状態はそうそうないですし(北海道のスキー場だとちょっと有り得る)、防寒さえしていれば、そう簡単に凍死しないことを学びました。おそらく、雪山ではこれが最大の恐怖になる要因ですから。
ただ、ジャッジポイントとしては二日かな、と思います。それ以上経つと、おそらく動ける体力がなくなってしまう。
まずは一日目の夜を乗り切ることです。
・防寒具のチェック、体温が下がらない体勢を工夫する
・汗をかかないように注意
・朝まで眠らないように会話する、歌う
こういうときのために、話のネタなんかは、たくさん持っているといいですね。そして眠くても夜は頑張りましょう。体温維持は必須、少しでも生存率を上げるためです。眠るなら、翌日の気温が上がる昼まで待つべきです。
運動にまったく自信がない人は、無茶せずひたすら待つでもいいと思います。人間は水分をとらないと5日が限界ですが、雪山ですから、リフトの上でも水分は何とか確保できるはず。水分さえとれていれば、食べ物なしでも平常時ならギリ2週間は行けるらしいですから。
日本の場合は、そもそももっとリフトのチェックが厳重でしょうし、仮に5日間、スキー場が閉まるとしても、二日もいなくなって、誰も心配しない、探さない、なんてことはまず有り得ません。誰にも心配されないような人は、そもそもスキー場にも旅行にも行っちゃ駄目です。誰かが心配してくれるのが、この日本国の美徳です。たった一言、行ってくる場所と、帰ってくる日を伝えておくだけで、生存率がぐっと上がるのですよ。
万が一。
たまたま集まったメンツがどうしようもない奴らばかりで、全員一人暮らし、家族との連絡もロクにとっておらず、友達にも彼氏彼女にも行き先すら伝えていない、かつ日帰りでホテルのチェックインもない、くらいの悪条件が重なり、こりゃ誰も気づかないわー、という確信があるのであれば、そのときこそ、「行動して切り抜ける」の出番です。
それでも、行動するのは一日目の夜が明けてからです。
視界が悪く、気温が最も落ちている時間帯にわざわざ行動するなんて愚の骨頂。まずは一夜を耐えしのぐ覚悟を決め、体力温存しながら夜明けを待ち、気温が上がるまではじっくりと耐えたとしても、状況はほぼ変わらないのです。
次に。
完全に助けは来ないと判断できる状況で、やはり15m級の高さにあるリフトから自力で降りなければならない場合のことを考えてみましょう。無論、実行は昼間に行います。
・まだ手元(足元?)にスノーボードがあればワイヤー滑空作戦
・腕力と握力に自信があるなら、一時的にウェアを手に巻くなどして防御力を高めつつ懸垂ワイヤー下り
装備も何も既に持っておらず、懸垂なんて到底無理なメンツしかいない場合(ワセリン×3など)、つまり上記のどちらも不可能な場合はどうすればいいのか。
【最終手段 1 】
現在着ているスキーウェアでロープを作り、それを垂らして飛び降りる高さを少しでも低くしてから飛び降りる
3人いたとして、上下のスキーウェアを合わせれば、6m程度のロープの代わりが作れるだろう。これなら15m-6mで、最短で9mの高さにすることができる。完全にぶら下がるところまで行ければ、身長分もプラスで、7mちょっとまで持っていけるかもしれない。
7mなら、それなりに受け身もとれる高さになってくるし、何とか軽い骨折程度で済むのではないか。多少出血しても日本ならまず大丈夫。
だって、狼いないし。
着地後は、上に残っている者がウェアを回収し、降りた者の分だけ地上に投げれば、全員、再度ウェアは着ることができる。低体温症も回避だ。脱いでいる間の10~20分程度は、ほぼ裸になるがもう気合いで耐えるしかない。
ただしこのスキーウェアによる手作りロープ、
耐荷重の性能がまったくもって行き当たりばったりになる。
長さを稼ぐ結び方をすると、ジャケットの方は脇のあたりが、ズボンの方は股のあたりが、すぐに裂けてしまうのではないか。雪山であれだけ転がっても破れたことなどないので、それなりの強度はあるに違いないが、ふだんから、強いウェアを着ておこう、としか言えない。
何より、手作りロープが千切れて失敗したときは、
降りる役はそのまま落下、残った者はウェアを失う
という状況になるため、やはり最後の手段になるだろう。
このケースの場合に限り、強度に不安がある場合は、降ろす1名を女子に託すのはアリだ。自分の体重を支えられるくらいの腕力は必要になるが、ここは頑張ってもらうしかない。
※ペアリフトで2名だった場合は、稼げる長さが4~6mに減る。それでも、最終手段としてギャンブルはできる高さだろうか。
【最終手段 2 】
上半身の骨折は覚悟、衝撃を分散させるように跳ぶ
ここからはさらに非現実的な話になってくるが、知っているのと知らないのとでは、少しでも違うだろうと思いたい。
特に取り残されたのが一人だった場合は、ウェアで稼げる距離など高が知れているし、飛び降りた後、ウェアが回収できないので、この場合はもう、とにかく待つか、そのまま飛び降りるしかないのだが、飛び降りる場合は、
如何に落下の衝撃を分散させられるか
が、致命傷を負うか負わないかの分かれ目になりそうだ。無傷は絶対に不可能な高さであるので、そこは諦める。
まず、垂直に飛ぶのは完全にアウトなのはわかっている。単純な落下のパターンも、臀部(でんぶ)から行く、肩から行くなど考えられるが、何処を打ち付けることになっても、その衝撃が腰や首などに致命的なダメージを与えるのを避けられる気がしない。
この場合、腰か両脚が折れてしまうと動けなくなってしまうので、それだけを回避することを考える。腕や肩や肋骨がどれだけ折れても、何とか動ける。
かなり勇気が必要だが、ここは逆の発想で、足が固定されてしまうスキーブーツなどは脱いで身軽になり、リフトの上に立って、
前回り受け身の要領で、勢いをつけて斜面が下っている方向に跳ぶ
のが一番いいかもしれない。
ここで重要なのは、落下の衝撃を少しでも分散させることで、とにかく真っ直ぐ落ちないことだ。勢いで少しでも斜面を転がれば、その分、衝撃は分散できる。
柔道の授業、真面目に受けていましたか?
最近の体育では、ダンスがやたら人気らしいが(楽しそうでずるい!)、まだ柔道が必修の学校も多いので、やったこと自体がある人は多いと思う。
僕は高校の時に授業で柔道があって、やたら前回り受け身の美しさが気に入り、完璧にマスターした派である(技かけたい派とは友達になれない)。すごい練習したので、今でもできると思う。
送り足払いとか、内股とか、背負い投げなんて、日常生活ではまったく役に立たないが、この受け身関連はきっちり役に立つ。ちゃんと授業を受けていれば、鍛錬していなくても、それなりに反応できるようになるものだ。
僕が大学生の頃、チャリで真横から自動車に跳ね飛ばされてボンネットの上を転がるという映画みたいなシーンになったことがある(残念ながらフロントガラスは割れなかった)。
チャリは死んだが、僕は膝の打撲程度で生還した。これを単なるミラクルだとは思っていない。おそらく無意識のうちに、衝撃を逃がすような体勢をとったはずだ、おそらく、たぶん、きっと。
まともに衝撃を受けていれば、チャリと一緒に真横に吹っ飛ばされたはずだもの。
まぁ、相手がクラウンとかそういう車だったのでボンネットの上を転がることができたワケで、そもそも運の要素は強いが(ワンボックスとかだったら無理なので)、才能ではないし、臆病になる時間すらなかったので、20%の努力と40%の運が、僕をサバイブさせたのだ。
▼前回り受け身(まえまわりうけみ)
『柔道チャンネル』に美しい例があったので、見てみよう。
この小指から入って、肩、背中、足の順で回転させていくところがポイントだ。15mからのジャンプの場合は、一発目に両脚で地面を叩くと、両方とも折れる可能性が高いので、動画の後半のように、そのまま立つ流れで行くといいだろう。立つことは不可能だろうが、そのまま転がってしまえばいいのだ。イメージだけでも持っていただきたい。
▼五点着地(五点接地転回法)
もう一つ、高所からの受け身という意味では、垂直に落ちた場合でも衝撃を逃がせる必殺技が存在する。
バキシリーズの第一部、『グラップラー刃牙(バキ)』にも出てくるこの着地法。「バキて!」というツッコミは待っていただきたい。これは実際に存在するのだ。海外の軍隊や自衛隊でも、パラシュートでの降下の際は、この方法で着地する。
百聞は一見に如かず、ということで。
これで高さ7.5m、らしい。
要はこういうことだ。
①斜めに爪先から入って
②そのまま脛(すね)の外側
③太腿(ふともも)の外側
④背中の片側
⑤肩の片側
と、落下の衝撃を回転力に変換しながら五点に分散させていけば、落下の衝撃を打ち消せる、というものなのだ!す、すごい!!!
いやこれは無理だろ。
ですよね。
もちろん、受け身関連は最後の最後の手段で、15mからのダイブでこれらを実践しろというのは不可能でしかないのですが、ただ垂直に落ちるよりは、生還の可能性が上がるはず。
綺麗である必要などないですし、無様でも何でもいいので、それしか選択肢がなくなったときには、転がるように跳ぶ、ということです。何とか動けさえすれば、パーカーのように、歩けなくても這って滑って下山することができます。
さて。
痛々しい話が続きましたが、例えこのような状況に陥っても、知識さえあれば、冷静な判断の支えになります。怖いのは当たり前、勇敢である必要なんてありません。可能か不可能かの見極めさえできれば、無駄に死ぬことはないのです。
そしてもし、もし雪山でこんな目にあって、無事生還した際には、インタビュー時に完全なるドヤ顔でこう言ってやってください。
『全部、雪のせいだ。』
サバイバルポイント
リフトの地上15mは脱出不可能な空間と認識する。
下手に動かず、助けを待つ。
おそらく日頃の行いが救助の有無を分ける。誰かに必要とされる人間になっておこう。