― ある日、目を覚ますとそこは雪国だった… ―
これは川端康成の世界ではない。
PC専用ミリタリーFPS「ARMA2」の大人気MOD、『DayZ』の冒頭シーンである!
『DayZ』は、公式での読み方がはっきりしていないが、
一般的には『デイジー』と呼ばれている。
実はこのMOD(有志が作った拡張パッチ、無料)、
あまりの人気で元のゲームであるARMA2が「Steam」売上1位に
引き上げられるという現象を起こしたほどのゲームだ。
未知のウィルスによりゾンビ・アポカリプスとなった
東欧の架空の小国「チェルナルス」を舞台に、
プレイヤーは日々、生き残るために、ときに殺し合い、ときに協力し合う。
ぶっちゃけ世界観は、大人しいバイオ・ハザードだと思ってくれればいい。
もちろん生きていくためには、
食べ物を食べ、
のどの渇きを潤し、
暖かい格好で体調を崩さないように
自分の拠点を充実させていく必要がある。
特にこのゲームをスリリングにしているものとして、
死んだらすべての所持品を失う
ということと、ゾンビ、その他のプレイヤーの存在だ。
食べ物を食べないと餓死してしまうが、
食べ物がたくさんあるところにはゾンビや、他プレイヤーといった危険も満載!
そういったスリルとジレンマを楽しむゲームなのである。
初めてこのゲームをやった人はその孤独感にまず驚くことだろう。
極寒の地に降り立ったプレイヤーのポケットには
古びた懐中電灯…
少しばかりのお菓子…
遠くにはゾンビの群れが見える…
頼る人もいなく、海岸に独りぼっち…
(今となっては、その状況を考えるとワクワクする自分がいるわけなのだが。)
それでもあなたは生き延びなければならない。
まずは物資を回収するため、近くの空き家に近づこう。
物音を立てないように…草むらに身を隠しながら…
このゲームのゾンビ達は、物音に敏感なのはもちろん、
発見されれば当然追いかけてくる。
初心者がゾンビの群れに追い掛け回されながら国道をひたすらランニングしている光景
は、DayZ名物としてあまりに有名。
そんな危険と隣り合わせの物資回収だが、
回収する場所によって得られる物資が異なる。
小規模な町や、村ならゾンビも少なくリスクは低いが、物資も少ない。
大規模な町や、軍事施設なら、ゾンビも多く、プレイヤーとも会う可能性が高いが、
そのリスクに見合うだけの物資を得られるだろう。
このゲームのプレイスタイル、いわば「生き方」は三者三様だ。
町から町へ放浪を続ける生存者もいれば、複数の町の近くで拠点を築く生存者もいる。
(ちなみに僕は複数の町の近くを拠点に行動していた。)
さて!そんなゾンビだらけの世界である日、あなたはほかの生存者を見つけた。
あなたならどうする?
声をかける?
立ち去る?
近づく?
これは、僕が自分のプレイスタイルを確立しつつあった頃の話だ。
僕がいつもの町に食料品と武器を調達しに行くと、
ゾンビらしからぬ俊敏な動きをする物陰が!
生存者だ!
つい嬉しくなり、走って駆け寄った次の瞬間…
僕はすべての所持品を失っていた…
頭を撃たれたのである。
彼の名誉のために断っておくと、
これは別にそのプレイヤーが特に好戦的であったというわけではない。
これがパンデミック後の人間同士の現実であり、最大に恐ろしいところだ。
彼はなぜ僕を撃ったのだろうか?
殺されて所持品を奪われる恐怖から?
それとも、僕の持つ物資を狙ってのことだろうか?
はたまた、とりあえず人を撃ちたかったのか…
おそらく、ほぼ反射的に恐怖から撃ったのである。
殺られる前に、殺ったのである。
逆の立場で考えるとよくわかる。
よくわからない見知らぬ不審者が、
ゾンビの間を縫って銃を手に持ちながら自分の方向に走ってくる。
そりゃ撃たれますわ…
実際、僕が逆の立場だったら、間違いなくびっくりして撃っていただろう。
相手が自分を撃てば、これまで何時間とかけて「必死」に集めた物資が失われるのだ。
少なくとも、追い払うことができればその危険はなくなるし、
相手を倒せば相手が集めた物資を横取りすることもできる。
その経験以降は、ほかのプレイヤーが遠くに見えた瞬間に茂みに隠れ、
反対方向に移動していくようになった…
それでも、町の中でバタリと出会ってしまうことはままある、
そんな時はお互いに銃の照準を相手に向けないように、
ゆっくりとゆっくりと、
後ろに下がり、
物陰に隠れ、
たがいに見えなくなった段階で走って逃げるのだ。
自分でいうのもなんだが、これはかなり友好的なプレイヤーの例だろう。
物資がある程度たまると(武装がある程度整うと)、
使ってみたくなるのが人の情というもの、
「人狩り」に興じるプレイヤーたちも少なくはない…
この後の彼がどうなったかは言うまでもない
もちろん、
これはゲームの中の話ではある。
だが、パンデミックや、大災害といった極限状態。
死んでしまえば、失うのは「所持品」どころではない
という状況下で、同じような状況に陥ったとしよう。
あなたは生存者を見つけたとき、
まずどうするだろうか?
とにかく、用心しておくに越したことはない。
無用人に姿をさらすのは危険なことなのだ。
ほかの生存者を見かけても、決して安易に近づいてはならない…
・相手が自分と同じ心理状態であるとは限らない
・相手が同じ性格やポリシーとは限らない(人を殺せる種類かもしれない)
・既に散々な目に遭って、人格がイってしまっている可能性がある
既に社会が崩壊しているのであれば、
一般的な感覚の全てが変わってしまっていると考えるべきだろう。
なお。
こういったオンライン系の世界規模で展開されているゲームには注意点がある。
もし(比較的)安全にプレイしたいのであれば、
日本からの接続に絞っているサーバーに入ろう。
海外のサーバーに入って、日本人だとバレると、
特定の国では速攻で殺されることになる。
日本のサーバーでも、接続制限を設けていないと
特定の国の集団に蹂躙されたりもする。
理由は「日本人だから」だ。
これは果たして、「ゲームだから」なのか、
「そもそもそうなのか」は誰にもわからない。
最後に。
この架空の国、チェルナルスでの生活にも慣れたある日のこと、
出会ったプレイヤーと仲良くなりかけたことがある。
銃をプレゼントした直後に頭をぶち抜いてくれた見知らぬ友人よ、
僕はあの仕打ちを忘れない…。
サバイバルポイント
極限状態では、久しぶりに出会った人間にテンション上がっても無闇に近づくな。