秋ですね!
スポーツで芸術で食欲で読書!登山で紅葉で大自然!んでもって、クマー!の季節ですね!
春夏に比べると、熊の被害ニュースは減りましたが、またここから少し危険な季節になってきますので、ご注意ください。
熊との遭遇は、何故かしら武勇伝も生まれやすいですが、これ、マスコミの報道の仕方が非常に良くないと思うんですよ、一般人が心の何処かで「もしかしたら倒せる?」とか「倒したら有名人になれる?」とか思っちゃうと思うんですよ。
僕は、高橋よしひろ先生のマンガ『銀牙 ~流れ星 銀』を熟読していますので、熊に勝てるなんて思ったことは一度もありません!
熊、めっちゃ強いから。
熊と一般人が格闘……これは相手が100kg超の総合格闘技の無差別級に、素人が体重60kgで挑むようなもの。人間よりは知能が回らないとしても、相手はバイティング(噛み付き)あり、武器(爪)あり、野性はあっても理性はなし。にも関わらず時間は無制限。この状況。
最初っからヘビー級とライト級の闘い、「一発もらったら終わり」の世界なワケです。
長い総合格闘技の歴史の中では、ファンの中では語り継がれる初期のUFC(Ultimate Fighting Championship)が、無差別級の上に、目潰しと噛み付き以外は何でもアリ(金的がOKだった)という、とんでもないルールでしたが、これが非常に熊との格闘には近いかと思います。まさに死合い。
なんと初期のUFCは服装も自由で、それこそ、同時期に世界規模で大流行した格闘ゲームの『ストリート・ファイター2』のリアル版。死人こそ出ませんでしたが、レフェリーストップすらなかったので、相手が降参するか、戦闘不能になるまで殴り続けることになり、毎回、勝者も敗者もほぼ全員があらゆるところを骨折やら内臓破裂やらして病院送りになるという、今では考えられない大会でした。
そんなリアル『ストⅡ』の中で、1993年の記念すべき第1回、そして第2回と第5回で優勝しているのが、無差別級の中では小柄な、体重80kgのホイス・グレイシーです。
言わずと知れた『グレイシー柔術』は、現在の格闘技界の中でも、最強と呼ばれる一角であり、柔よく剛を制すの精神が脈打つ流派です。その一族であるホイスの相手は100kgを超えてくる、まさに野獣ばかりでしたが、殴り合いで勝利している訳ではなく、ほぼ寝技からの打撃・関節技で仕留めています。これは柔術というものが未知のものだった頃の話で、ホイスが出場しなくなって以降、80kg以下の選手がUFCの無差別級で優勝したことはありません。本来、体重差とは、それだけで圧倒的な戦力差になるのです。
体重差のある野獣が相手でも、ホイスのように知恵と技術で覆すことは不可能ではない、でしょう。
ですが。
僕たち、グレイシー一族じゃないんですよ(キリッ
そもそも、ホイスですら80kgはあるワケで。
フツーに考えて、体重60~70kg程度で格闘技経験ゼロの我々一般人が、100kg超の熊相手に喧嘩で勝てる確率なんて、これっぽっちもないワケです。
つい最近、国内で熊と格闘して生き延びた方も、空手の師範代クラスだった方です。
僕たち、空手とか漫画でしか知らないんですよ(キリリッ
でわ、一般人はどうすればいいのか。
改めて、熊の生態について学び、有効な対策を学ばねばと思うワケです。
どちらかというと、僕的には、
どうすれば熊に迷惑をかけないで済むのか。
という観点で話を進めたいと思います。
そもそも熊(くま)とは?
国内に生息している熊は2種類。ヒグマ(羆)とツキノワグマです。
環境省の調査によると、北海道の約55%の地域にはヒグマが、本州と四国の約45%の地域にはツキノワグマが生息しています。つまり、日本の半分は、熊の生息地ってことですね。九州の熊は絶滅したとされており(くまモン以外)、環境省のリストからは削除されています。
国内にいる2種類の熊を、それぞれ見ていきましょう。
■ヒグマ(エゾヒグマ=ヒグマの亜種で北海道のみに生息)
国内の陸上動物では最大。
【地域】北海道の半分以上に生息
【体長】オス(2m前後)、メス(1.5m前後)
【体重】オス(約120 – 250kg)、メス(約80 – 160kg)。確認されている最大のものは520kgとされている。
【走力】最大時速50km(個体差あり)
【食事】雑食性。基本的に何でも食べる。もちろん肉も食べるが、好んで狩りをすることはない。主に自然の中で死んだ鳥や鹿の死肉を食べている。現在では、かなり草食性に偏っているとされている。原則的には、人間を捕食することはない。
【活動時間】朝方と夕方に活動が活発になるが、気まぐれで昼夜問わず活動することも多く、一定しない。休憩場所も決まっておらず、何処でも休む。
【繁殖期】おおよそ5~7月
【冬眠】おおよそ12~3月(メスは冬眠中に出産する)
【被害の多い時期】4~6月(冬眠明け・発情期)、9~10月(冬眠前)
【寿命】約25年
■ツキノワグマ
【地域】本州と四国の33都道府県に生息
【体長】オス(1.2‐1.8m前後)、メス(1.5m前後)
【体重】オス(約50 – 130kg)、メス(約40 – 80kg)。確認されている最大のものは173kgとされている。
【走力】最大時速60km(個体差あり)
【食事】雑食性であるが、草食性に偏っており9割は植物。原則的には、人間を捕食することはない。
【活動時間】朝方と夕方に活動が活発になるが、やや夜行性(特に人里近くの個体は夜も活動する)。樹洞や洞窟など狭いところに入って休むことが多い。
【繁殖期】おおよそ5~7月
【冬眠】おおよそ12~3月(メスは冬眠中に出産する)
【被害の多い時期】4~6月(冬眠明け・発情期)、9~10月(冬眠前)
【寿命】約25年
あまり知られていないことかもしれませんが、ヒグマとツキノワグマは生息地域が完全に分かれているため、北海道で遭遇する熊はヒグマ、北海道以外で遭遇する熊はツキノワグマ、ということになります。
にしてもヒグマ、でかくない?
ちょっと予想よりもでかいんですけど。
500kgもあったらまともに動けるとは思えないが、2m、200kgとかがスタンダードだとしたら、強いというレベルを超えていそうな気がする。
ツキノワグマは、何となくイメージ通り。ヒグマと比べると小さく感じてしまうけど、比べたって意味ないよね、この場合。
それに、どちらも速い。明らかに人間よりも速い。どうやら、『決して背中を見せて逃げるな』というのは本当らしい。
熊って、ものすごい肉食のイメージがあったけど、主食は植物になりつつある模様。鮭とかがとれなくなってきており(たぶん人間のせいで)、環境適応して肉食性を下げて草食性に移行しているらしい。
環境にちゃんと適応して、ヒグマもツキノワグマもしっかり生きてるよね、これ。
なんでこれが人間を襲うことがあるのか……このあたりを明確にしていく必要がありそうですね。
熊による被害の歴史(国内)
日本国内で熊が人間を死に至らしめた事件の中でも、特に特徴的なものを3つピックアップします。
①三毛別羆事件(さんけべつひぐまじけん)
日本史上、記録に残っているものでは、最多死亡者数を出してしまった最悪の獣害(じゅうがい)事件。
【時期】1915年12月9日 – 12月14日
【場所】北海道・三毛別(現、苫前町三渓)
【熊】ヒグマ:推定7歳:オス:体長2.7m:体重340kg
【死傷者数】7名(成人女性2名、子供4名、胎児1名)死亡、3名重傷
【特徴】
■窓から民家に突撃して、躊躇うことなく人間を襲い、その場で食べている《最初から獲物と認識している》
■女性と子供ばかりを襲っている《女性に対しての執着が見られる》
■二日連続で同じ民家を襲い、そこから去った後、すぐに近くの別の民家を襲撃している《まだ人間が大勢いた場所から一時は退散してまた人間を襲うという不可解な行動》
■置かれていた焚火を完全に無視している《火を恐れていない》
■本来、冬眠に入っていてもおかしくない12月に事件が起こっている。冬眠に失敗し、冬場もエサを探し続ける『穴待たず』だと言われているが、近年では、森林伐採などによって野生動物と人間の活動範囲が重なったためとも言われている。《生態系から外れていた可能性がある》
②福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件
登山中のワンダーフォーゲル部の学生が、ヒグマに執拗に追い回されて3日間に渡り合計6度もの襲撃を受け、5名のうち3名が次々と殺されていくという衝撃的な事件。
【時期】1970年7月25日‐27日
【場所】北海道中央部・日高山脈・カムイエクウチカウシ山
【熊】ヒグマ:推定4歳:メス:体長1.5m(剥製の状態で):体重推定150‐200kg
【死傷者数】3名(成人男性)死亡
【特徴】
■解剖後、剥製にされて残っているものが体長1.5m程度なので、多少縮んだとしても、2mはなかったと思われる。目撃証言では2mとも言われているが、判然としない。体重も正確に残っている文献がないが、この場合、人間とそれほどサイズは変わらなかった(むしろ小さかったと思われる)ヒグマが、3名の命を奪ったことになる。
■3度目の襲撃までは、一度学生たちから奪った登山用のザックを奪い返され、それを再度奪おうとしている模様だったが、4度目からは、明らかに人間自体をターゲットにしている節がある。《熊が途中で目的を変えることはあまりない》
■解剖時、ヒグマの胃には人間の肉がなかった。つまりこのヒグマは、人間を食糧として捉えていなかったにも関わらず、3名を引き裂いて殺したことになる。《攻撃そのものが目的になっている、あるいは遊んでいたと思われる》
■通常、ヒグマのメスは2歳程度で交尾をするが、4歳相当にも関わらず、交尾の形跡がなかった。《生態系から外れていた可能性がある》
③秋田県鹿角市ツキノワグマ連続襲撃事件
タケノコ採りに山に入った人々が次々と襲われ、これまでヒグマより大人しいとされていたツキノワグマによる史上最悪の連続殺傷事件に発展した事件。
【時期】2016年5月20日‐6月10日(現時点)
【場所】秋田県鹿角市十和田大湯
【熊】ツキノワグマ:推定7歳:メス:体長1.3m:体重推定70kg
【死傷者数】4名(ご高齢の方)死亡、2名軽傷
【特徴】
■ツキノワグマにとって、5月6月は繁殖期で、かつタケノコはこの時期の熊にとっての主食である。《熊にとっては縄張り争いと同義だったのではないか》
■解剖後、胃の中からタケノコの一部と人体の一部が見つかった《結果的に、人間は食糧と見なされた》
■この射殺されたメスのツキノワグマは襲撃の実行犯ではなく、死肉を食べただけとも考えられており、主犯はオスではないかと言われている《集団で人間を狩っていた可能性がある》
■最初の襲撃事件から、再三の注意喚起があったにも関わらず、タケノコ採りに向かう人が絶えなかった。一度に大勢が襲われた訳ではなく、4人目の被害者が出るまで、別々の人たちが、別々の時期に襲われている《もはや熊の問題ではない》
ちょっとした考察なんぞを挟んでみるけど。
三毛別の事件に関しては、正直、どうにもならなかった気がする。かなり事細かに当時の状況が伝えられているが、突然に、しかも民家の中に押し入って襲撃しているため、対策も何もあったものではなく、背景に不明な点も多いため、原因究明は難しいと思われる。
単純にヒグマの方がおかしくなってしまっていたのか、何かのタイミングで人間を敵とみなしていたのか、どのタイミングで人間を食糧と判断するようになったのかなど、1915年ということもあり、内容が伝聞すぎてあまりにも曖昧だ。それでも、やはり生息地域の問題はあったように思われる。
ワンダーフォーゲル部に関しても、最初の時点から、山で出遭った熊を最大の脅威とは考えていなかった節はあるが、1970年で学生ともなれば、そこまで熊の習性について熟知していたとは思えない。
3度目の襲撃の時点で、全員で一気に下山する、という選択肢がとれれば、おそらくこの悲劇は避けられたはずだが、遠路はるばる福岡から北海道に出向き、簡単に山を下りたくなかったのはわかる。貴重品の入ったザックを取り戻したかったのもわかる。実際に死者が出るまで心の何処かで軽く考えていたのもわかる。
登山で危険なのは何も熊だけではない、むしろ熊よりも危険なことが、それこそ山ほどある。通常では考えられないような行動を見せたヒグマへの対処と決断が遅れたことを、決して責めることはできない。ご冥福をお祈りする。
しかし、だ。
秋田県鹿角市のツキノワグマ事件には、巨大な疑問符がつく。こちらに至っては、一人目の犠牲者が出た直後から注意喚起が行われており、道路も封鎖されていた。
にも関わらず、人々はタケノコ採りに山に入り続けた。山を封鎖しなかったのもどうかと思うが、驚くべきは、4名もの人間が殺されたあと、危険が去り切っていないと勧告が出ていても、タケノコ採りに山に入る人々が絶えなかったことだ。
人気のタケノコらしいので、実際、それを生業にしている方もいらっしゃるだろうし、単純に正否を決めつけることはできないが、やはり何かが、何処かがおかしい。
ここで考えるべきは、熊に襲われても人間が助かるかどうか、ではない。人間に被害が出ない方法があればいいという話でもない。現状で人間がやっていることが、熊にとってどういう状況を引き起こしているか、ということではないのか。
熊にとって、6月のタケノコは山の中では限られた貴重な食糧だ。主食である。
クマー、主食のタケノコを食べに来る
↓
見知らぬ奴がタケノコを採っている
↓
なんか見たことないし怖いけど、数少ない食糧を奪われる訳にはいかない
↓
攻撃して排除しなければならない
↓
抵抗はされたが何とかやっつけた
↓
どうやらこの生物は弱い、十分勝てる
↓
この生物はエサ場を荒らす敵だし、しかも食べられるようだ
↓
新たな食糧候補
↓
今度見かけたらまた襲おう
あれ?これ普通の流れじゃない?
その生物が人間だったということ以外、何も不思議なことがない気がするのは、僕だけだろうか?この秋田県鹿角市のツキノワグマ事件については、熊が異常なのか、人間が異常なのか、わからなくなる。
こういった事件を取り上げると、不用意に熊の危険性を煽ってしまうことになりかねないのだが、実際に、熊の被害がどれくらいあるのか、統計データを見てみよう。
熊による被害者数と死亡者数の推移(直近8年間)
環境省のデータから抜粋(数値は聞き取り調査の模様)
平成20年度 | 被害者数 | 死亡者数 |
ツキノワグマ | 56 | 0 |
ヒグマ | 3 | 3 |
平成21年度 | 被害者数 | 死亡者数 |
ツキノワグマ | 61 | 2 |
ヒグマ | 2 | 0 |
平成22年度 | 被害者数 | 死亡者数 |
ツキノワグマ | 147 | 2 |
ヒグマ | 3 | 2 |
平成23年度 | 被害者数 | 死亡者数 |
ツキノワグマ | 78 | 1 |
ヒグマ | 3 | 1 |
平成24年度 | 被害者数 | 死亡者数 |
ツキノワグマ | 75 | 1 |
ヒグマ | 2 | 0 |
平成25年度 | 被害者数 | 死亡者数 |
ツキノワグマ | 52 | 1 |
ヒグマ | 4 | 1 |
平成26年度 | 被害者数 | 死亡者数 |
ツキノワグマ | 116 | 1 |
ヒグマ | 5 | 1 |
平成27年度 | 被害者数 | 死亡者数 |
ツキノワグマ | 56 | 0 |
ヒグマ | 0 | 0 |
平成28年度(現時点) | 被害者数 | 死亡者数 |
ツキノワグマ | 53 | 4 |
ヒグマ | 0 | 0 |
あれ?こんなもん?
と感じませんでした?
人間が野生の熊に襲われて死亡するとなると、どうしても現場が凄惨なことになるので、報道も凄惨になってしまい、脳裡に焼き付いたイメージが先行していく。これは芸能人がたった一つのミスで、全人格を否定されてしまうのに似ている。
しかし実際には、この100年で起こった国内の熊被害で、3人以上が犠牲になったのは、先ほど紹介した3件だけだ。
三毛別の事件が本当に強烈すぎてアレなのだが、以降の歴史で、同じ形で人間が襲われたケースは一度たりともないのである。明らかに、超超イレギュラーなケースだ。
逆にこの100年で、国内だけで何人の人間が、人間によって殺されたか。数えるのも馬鹿らしい(そのデータ資料を開いて、あまりの多さに辟易してそっと閉じたワセリンである)。
無論、熊被害の死亡者数が少なくても、被害件数はそれなりにあるので、対策は必要だ。
間違いなく陸上最強で、出遭ってしまうと死が近いヒグマに目が行きがちだが、実際の被害件数はツキノワグマの方がかなり多いのも気になるところだ。
だから僕は、あえてこう言いたい。
人間は、熊のために熊対策をすべきだと。
熊に出遭わないようにする
大・原・則!
当たり前の話ではあるが、これが最も重要で、本来、出遭ったときのことなど考えるべきではない。人間が熊にしてあげられる最大の優しさが、出遭わない、だ。
人間に出遭ってしまった熊には、一つもいいことがない。未知との遭遇で心臓に悪いだけだし、万が一でも人間を傷付けてしまったら、「人間は弱い、人間は食べられる」ことを学習してしまったことになるので、討伐隊が組織され、確実に射殺される。事件を起こしてしまったら、それは確定的な死を意味するのだ。
①事前に登山する山や森の情報を調べる
何故か、ほとんどの人が現地の天気を調べるくらいしかしないのだが、これは自然に足を踏み入れるときの基本だ。熊だけではなく、山の天候やコースの状況、周囲の状況などもリスク回避のためには重要な情報になる。そもそも、熊に襲われて死ぬ確率より、地面の緩みなどによる滑落で死ぬ確率の方が遥かに高い。このネット社会、調べられないとは言わせない。
当然だが、注意勧告には従うものだ。熊の目撃情報が流れていたら登山もハイキングも中止だ。中止にしてくださいお願いします。
②複数の人数で行動する
よほどのマニアでもない限り、一人登山はそうそうしないと思うが、常に複数人で行動するだけで、熊との遭遇は避けやすくなる。過去の事例から見ても、熊は人間が一人のときに襲うことが多い。例え出遭わなくても、熊に見られている可能性はある。山林での単独行動はNGだ。
③登山ルートを外れない、見晴らしの良いところを歩く
熊が堂々と山道を歩いていることはあまりない。自分が隠れるくらいの藪とかブナ林とか、木の陰とかにいるものだ。出会い頭の近距離遭遇だけは避けなければならない。
④常に周囲に気を配る
そもそも自然を体感しに行くのが目的であるので、常に臨戦態勢でいろとは言わないが、あまりにも無防備なのは如何なものか。熊が近くにいれば、サインはある。
・木の枝が折れる音
・藪のガサガサ
・木についている爪の跡
・熊の糞
・気配(達人になるとわかるらしい)
⑤香水など、刺激臭のあるものを身につけない
熊の興味を引いてしまう可能性がある。
⑥春から初夏(5~7月)は特に警戒を怠らない
この時期は熊にとっての繁殖期。オスがメスを探して活動的になり、行動範囲もかなり広がる。このため、特に遭遇率が上がってしまう時期になる。
⑦水場と時間帯に注意
ヒグマもツキノワグマも、特に夜明け近くから朝方と薄闇くらいの夕方に活発になり、水場に現れることが多い。沢で釣りをする場合は特に注意が必要だ。
⑧山菜など、熊の食糧になる植物を採取する場合は注意
熊の餌場に入り込んでしまっている可能性がある。
※この知識には注意===
▼熊除けの鈴やラジオなどで音を出し続ける
良く言われていることだが、人間と言うよりも、同種以外には常に慎重なシカやイノシシなどの野性動物ならまだしも、山の中では敵のいない熊への効果は薄いと考えるべきだろう。むしろ、人間に慣れてしまっている熊、人間を食べたことがある熊、生態系から外れてしまった熊、に関しては、エサ認識しているため、その音に寄って来てしまうこともある。
熊にも個体差があるので、絶対に効果がないということはないと思うが、それ以前に、むしろ周囲の気配やサイン音を聞き逃す結果になりかねない。また、山には自然を楽しみに行っているはずなので、音を出し続ける、というのはちょっと周りにも迷惑だ。
熊と出逢ってしまったら
熊が初めて人間を襲う理由は3つしかない。
1:子供、守る、ゼッタイ
子供を守ろうとしているときの母熊は、絶対に引くことがない。相手が人間であろうと虎であろうと関係ない。最も凶暴になる瞬間と言ってもいいだろう。これは熊も人間も同じだ。子供を守ろうとする母親は地上最強である。
2:びっくりして思わず手が出てしまったんです
実は最も多いのがこのパターンだと言われている。出会い頭の遭遇では、人間もびっくりするが、熊もびっくりしている。テンパっているので、ちょっとしたことが引き金になって、瞬間的に身を守ろうとして手が出てしまうのだ。
3:なんだ、敵か
自分に攻撃をしてくるモノ、自分のエサ場に侵入してくるモノを排除するのは当たり前のことだ。
この結果、「この生物は弱い」「この生物は食べられる」という認識が生じると、
4:人間は食糧
という4番目の理由が出現することになる。
どんなに注意していても、残念ながら出遭ってしまう場合もあるだろう。そんな緊急時には、どう動くのが正しいのか。
下記は、
・人間サイドは登山やハイキングなどが目的で、刃物などで武装していない一般人
・熊サイドは、あくまでも人間を一度も襲ったことがない熊
という観点からの対策として考えて欲しい。
確率論になってしまうが、人間を襲ったことがある熊は討伐されているはずなので、前者か後者かといったら、前者として対策を立てるのが選択肢としては正しいだろう。そもそも、後者の場合は、通常の対策は一切通じない。気付いた時には襲われているはずだ。
①絶対に背中を見せて走って逃げようとしてはならない。絶対にだ。
熊は、逃げるものを獲物と認識して反射的に追う、という習性が非常に強く、完全にタブーなのが『走って逃げる』だ。熊は一つのことに集中すると、周りが見えなくなるほどだが、『素早く遠ざかるもの』に関しては、捕食中ですら反応する。
人間だもの、そんなに冷静でいられるはずもないのだが、ここはぐっと堪えなければならない。熊の時速は50km、一般人が登山の格好では平地でも時速20kmがせいぜいだろう。しかも山の中。まともに走れるとは思えない。まず逃げ切れない。
集団の場合、このことは事前に話し合っておくべきだろう。度を失って逃げ出す者が一人いると、おそらくその人がターゲットになるし、パニックが伝染する可能性が高い。散り散りになってしまうことだけは避けるべきだ。集団でいる方が確実に安全だ。
②正面を向いたままゆっくりと後ずさりして後退、熊の視界から消える
熊と出遭ってしまった場合は、「獲物」「敵」と認識されないように振舞うことが重要になる。熊だって、訳の分からない生物に出遭ってドキドキしている。「いったいこいつは何なのか?」、判断を保留して様子見している状況だ。
熊の臨界距離は基本的に12m、子連れの場合は20mと言われている。つまり、この距離感が熊のATフィールドだ。ずいぶんと広い。12m以内の場合は、いつ攻撃されてもおかしくない状況にある。
ひとまず、12mを目安に距離を空けていく。12mという目標があれば、何とか心は保てるだろう。子連れかどうかは見た目では判断できないので、次は20mが目標になる。最終的には50mだ。
後退する際には、遮蔽物がある方向にすると尚良い。木の後ろなどに入れれば、熊の視界から消えることができる。熊は、視界から消えたものを敵とは認識しないし、恐怖も消してあげることができる。
集団の場合は、できるだけ固まって後退するようにしよう。
ちょっと精神論になってしまうが、気力はとても大事だ。熊だって、自分より強いかもしれない相手には仕掛けてこない。後退はするのだが、後ろ姿も弱気な素振りも見せてはならない。人生一番のポーカーフェイスの出番だ。慎重かつ優雅に、当然のように遠ざかるのだ。気持ちだけでも。
③遭遇したのが子熊の場合、必ず親が近くにいる
子熊にいきなり襲われることはまずないが、「かっわいい~(はぁと)」などと言ってる場合ではない。すぐに周囲に全神経を張り巡らせて、遠ざかる方向を見極めなければならない。無論、子熊と遊ぼうなどと考えてはならない。母熊と子熊の直線上の真ん中に入ってしまうと、ほぼ100%、攻撃される。
④奪われたものは諦める
遠ざかっていく途中で、リュックやザックを捨てることや落とすこともあるだろうが、熊は、一度手に入れたものに対しての独占欲が恐ろしく強いため、取り返そうとしてはならない。その行為は、敵認識されてしまう。
⑤距離をとれたら、即刻下山して管理センターに報告
逃げ切れたことで、変に気が大きくなったりすることもあるかもしれないが、熊はストーカー並みの執着心を見せることがある。一度逃げ切れても、興味を持ってしまうと、追ってくる可能性が十分にある。長居は無用。かつ、熊との遭遇は、他の登山者にも危険が及ぶということなので、その人達の為にも報告が義務である。
※この知識には注意===
▼大声を出して熊を驚かせる、恐怖心を与える
これは正直、何とも言えない。過去の事例では、確かにこれで熊が逃げ出しているケースもあるようだが、まったく通用していないケースもある。両者の間で緊張が張り詰めているなら、刺激を与えないという意味では、無言が一番良い気がする。
▼死んだふり
熊は、もともと死肉を食べる動物である。通用しない。謎の都市伝説である。
▼火を怖がる
大型の野生動物の多くは、火を怖がることは少ない。そもそも火が何かもわかっていないのに怖がるワケがない。熱さを感じれば退くこともあるだろうが、火を怖がっている訳ではなく、「見たこともないもの」に慎重になっているだけだと考えられる。
熊が襲ってきたら
出遭ってしまったときの距離が近すぎたり、何かしらの刺激で反応してしまったりして、熊がこっちに向かってきてしまうという残念な展開もあるだろう。ここからはもう運になるが、まだだ、まだ闘うには早い。
①ワンタッチ式の黒い傘を広げる
イノシシにも有効なこちらの対策、熊にも有効だとされている。やはり対象物が急激に消えたり大きくなったように見えるのには驚くようだ。
②熊撃退スプレーを使う
市販されている強力な熊撃退用の専用スプレーが存在する。ちょーっと割高なので、一般的な登山者などが持つことは少ないのだが、強烈なトウガラシ成分で、熊の顔に吹き付ければ物理的に目は見えなくなり、涙と鼻水が止まらなくなる。実際には、3m程度の距離でないとまともに当たらない代物で、風が強いと射程もままならないのだが、適切に使うことができれば、少なくとも中距離から熊の戦意を喪失させられる、おそらく最強の熊撃退アイテムである。
しかし、だ。
こういったときの対処として、必ず考慮すべきなのは、果たしてそれが実行できるかどうかである。
期せずして遭遇してしまった時は、持っていたとしても、ワンタッチの折り畳み傘も、撃退スプレーも、リュックの中じゃないですかね?撃退スプレーを常に腰に下げて、いつでも抜けるようにしている人なんて、見たこともない。
また、睨み合いながら熊からジリジリと離れつつ、襲われた時に備えて冷静にリュックから傘とかスプレーを取り出すなんてことも、よほど胆力が強くないとできるとは思えない。
僕が大学生の頃、吉祥寺の商店街を歩いていたときに、突然、『パァン』という音が響き渡ったことがある。その瞬間、そこにいた全員の動きが止まった。30人ほどいたと思うが、文字通り、完全に停止状態。
心の中では『え?なに?なに今の?銃声?』と疑問符が連続して出ているものの、瞬時にカラダなんて動かない。5秒か10秒か……しばらくしてから、それが自転車のタイヤがパンクした破裂音だと気付いた人がいて、全員、ほっとすると同時に再び歩き始め、商店街は日常に戻った。
これがもし、乱射事件のようなものだったら、そこにいた全員、身を守ることはできなかった。僕も含めて、防御体制に入れた人は、一人もいなかったのだ。
予期せぬ遭遇の場合は、まず間違いなく、凍りつくはずだ。強がっても仕方ない。
ただ、この熊撃退スプレーに関しては、リュックの中で構わないので、やはり持っておくべきだと思う。一般人がさほど扱いに困らずに持ち歩けて、かつ確実に熊にダメージを与えられる武器となると、これ以外にはない。
突然の遭遇のときには頭が回らなかったとしても、二度目以降に備えなければならない状況に陥ってしまったとしたら、やはり武器は必要だ。一旦落ち着けば、頭も回るようになる。そのときに、このアイテムは必ず役に立つ。
③熊撃退スプレーについて
日本ではあまり馴染みがない代物だが、グリズリー(『Grizzly bear』。北米の『ハイイログマ』の呼称。ヒグマの一種で、イエローストーン公園で最強の動物)対策が日常の北米では、熊撃退スプレーは日常的に必須のアイテムである。
いわゆる、対人用の催涙スプレー(防犯スプレー)は、人間には有効だが、熊には効果が薄い。代替にはなりにくいので、やはり熊専用の撃退スプレーでなければならない。
日本製はない(そんなに売れないからね)。購入可能なものは幾つかあるが、やはりここは、実績のあるアメリカ森林警備隊が採用しているUDAP社製のものが確実だろう。
熊撃退スプレーは、強力すぎるため日本では『武器』に該当し、理由もなく持ち歩いていると逮捕されることもあるので注意。そのため個人輸入もできないが、国内にUDAPの正規代理店があるので、Amazonで普通に買うことができる(それもちょっとどうなんだと思うけど)。
戦闘状態に入った熊は、それこそ人間の通り魔と同じだ。多少の攻撃は逆効果、むしろアドレナリンを誘発して、より凶暴になるのは容易に想像できる。しかし、熊も人間も、目と鼻をやられると、急速に戦意を失う。花粉症が酷い時って、パワーが出ないでしょ?それどころか、あらゆることに対して、やる気が出なくなるでしょ?そういう効果がある。何よりも、少なくとも数時間は、熊の視力を奪うことができるので、逃げるには十分な時間が稼げるのだ。
使い方は、カナダの世界遺産でもあるバンフ国立公園が提供している動画が一番わかりやすかったので、そちらを見るとわかりやすい。
注意点は、人間にもメチャメチャ効くってこと。抜群の効果がある。スプレーなので、風向きを読み間違えて自分で食らったりしたら洒落にならない。ちょっと高価だけど、熊用としてだけじゃなくて、防犯用に玄関に置いておくつもりで購入するのが良いかもしれない。
※この知識には注意===
▼木に登っては駄目?登った方がいい?
ケースバイケースだろう。
木に登るという行為は、『熊も木に登れるから』という理由でNG行為として上げられることが多いが、場合によっては、かなり有効な対策に成り得る。
確かに熊も木に登ることができるが、好んで木に登るような動物ではない(個体差はある)。特にサイズが大きい熊は、対象が木に登るだけで諦めることも多いのだ。若くてまだ体重の軽い熊だと平気で木に登るので少々厄介かもしれないが(木の上で寝たりもする)、それでも木の上の方が、平地を逃げ回って格闘するよりは、よっぽどリスクが少ないと言える。
唯一、まともに熊に攻撃を加えられる体勢でもある。熊が下から追って来た際、『上から下にブーツで蹴り下ろす』以上に、強力な攻撃はないはずだ。おそらく、山の中で武器を持たない人間が可能な最大の攻撃になる。
危機が去ってなくても、一息つければ、次の対策に入れる。木の上で、リュックから熊撃退スプレーを取り出すのだ。スプレーを正確に当てるには、絶好の状況になっているはずだ。
大事なことは、熊に引きずりおろされる前に木に登れるかどうかの判断の方で、直立不動で足を掛けるところもない木に登るのは無理だし、そもそも木に登ったことがないような人は、選択肢としては考えない方がいいかもしれない。
熊と格闘になってしまったら
ついに来てしまったか、このときが……。
例え人間よりサイズが小さくても、おそらく体重は上だ。牙と爪による攻撃は、人間のそれとは根本的にパワーが違う。こうなってしまうと人間に勝ち目はないが、だから諦めろという話ではない。全力で抵抗はすべきだ。
闘わなければ、勝てない。
ほとんどの場合は素手の状態で格闘に突入するはずなので、ないよりはマシかもしれない、程度の格闘知識をば。
①時期によって熊の強さは違う
○4~5月上旬
冬眠明けで、腹ペコ。食糧と見なされてはならない。一方で、退院直後のようなものなので、著しく体力と腕力が低下している時期。3発までなら耐えられるかもしれない。
○5月下旬~7月
体力満タン、発情期、情緒不安定。つまりスーパークマー状態である。決して戦ってはならない。
○8~9月
精神安定、体力充実。本来の熊の強さを発揮。
○10~11月
食べるものが少なくなってくるため、やや腹ペコ。冬眠前に食糧を探している時期。食糧と見なされてはならない。
○12~3月
この時期に出遭ったとしたら、冬眠に失敗している可能性が高い。エサがとれない時期だから冬眠するのであって、当然に腹ペコ。理性が消し飛んで見境がなくなっている可能性が高く、非常に危険。
②激突してくることはない
熊は、イノシシのように突進して来てそのまま激突してくるということはなく、ダッシュして来ても目の前で一度止まり、一歩下がってから戦闘態勢に入る、という不思議な性質を持っているらしい(真偽は若干あやしい)。つまり、その瞬間が最大のチャァ~~ンス!見極めることができれば、再度距離をとるか、先手の一撃を食わらせることができる。かもしれない。(無理だろ……)
③熊は左利き
左腕の攻撃の方が強力。左腕の攻撃だけは食らわないように注意する。ただし、右腕でも馬の首を一撃でへし折る威力(意味なし)。
④とにかく目、鼻だけを狙って攻撃
熊にダメージを与えられるしたら、目か鼻しかない。さすがに素手は厳しいので、握れるくらいの石を拾って叩きつける。目、鼻以外のところへの攻撃は、ほぼ通用しない。運が良ければ、ダメージを与えられるかもしれないし、びっくりして距離をとってくれるかもしれない。
⑤亀の子戦法
何一つ自信がない人は、両手で首を抱えて膝を折った状態で地面に突っ伏し、とにかく腹部と頸部に致命傷を負わないように耐える。熊の攻撃は1分間程度で一段落すると言われている(長いわ!)。
人間を食糧と捉えている場合は、もうどうにもならないが、それ以外の場合は、熊の方で飽きるか、敵ではないと判断してくれる可能性がある。下手に闘おうとするより、よっぽど生存率は高いかもしれない。
⑥とにかく騒ぐ
この状態に突入して戦法なんて考えている余裕はまずない。当然だろう。何も考えられないときは、とにかく大声で叫びながら暴れ回る。
おおよその習性は共通しているにしても、熊も人間と同じように個体差があり、性格も違う。好き嫌いがあり、得意なことも苦手なことも違う。何がきっかけで熊の戦意を削げるかはわからない。であれば、諦めずに、何かやってみるしかないのだ。
まとめ
さて、僕自身、情報量が多すぎて頭の中が整理できていない状態だ。ヒグマとツキノワグマで性質は異なるし、人間慣れをしている、していないでも、だいぶ対策が変わってしまうと言わざるを得ない。
だが、確実に共通していることもある。それをまとめておこう。
①最優先で遭遇しない努力をする
②集団で行動する
③熊撃退スプレーは持っておく
④【遭遇時】背中を見せて走って逃げてはならない
⑤【遭遇時】強気で正面を向いたまま20m以上離れる、視界から消える
⑥【遭遇時】奪われたものは取り返さない
⑦【遭遇後】即下山して報告する
さいごに
過去の凄惨な事件ばかりが取り沙汰される熊ですが、やはり我々は、まず自分たちの足元を見なければならないと思うのですよ。
皆さんは、『知床ソーセージ事件』(ネーミングは勝手につけさせていただいた)をご存知だろうか。
コードネーム97B-5、またの名をソーセージ。
北海道、知床半島の国立公園に住んでいたメスのヒグマです。
知床半島は世界遺産に指定されたことで観光客が増え、一部、野生のヒグマが見られるということで、国道沿いに車を停めて見物する人や写真を撮る人が増えているという。
そんな中、観光客が一本のソーセージを彼女に与えたことから悲劇は始まる(これが理由で、彼女はのちに「ソーセージ」と呼ばれるようになる)。
彼女は食べ物をもらえたことで、人間への警戒心が薄れ、人間や自動車を見ると、エサを連想するようになり、より人里に近いところで行動するようになってしまう。幾度も山沿いの国道まで降りてくるようになってしまったのだ。
地元の方々は、何とか彼女の人間への恐怖心を呼び戻そうと試行錯誤し、山に戻るように促そうとした。
効果はなかった。
人に慣れすぎてしまったのだ。
そのうち、彼女は子供たちが通う小学校にまで降りて来るようになってしまう。
もちろん、この時点で彼女は何もしていない。
人を傷つけたり、襲ったりもしていない。
だが。
どんなに人間に慣れようと、熊は熊。
いつ、野性に目覚めるかわからない。
いつ、子供たちを傷つけてしまうかわからない。
だから。
現地の方々は、射殺という選択肢を取らざるを得なかった。
誰一人、彼女を射殺などしたくはなかったはずだ。
心中を察するのも失礼なほど悩んだはずだ。
それでも、事件が起こる前に、決断しなければならなかった。
あまりにも不用意な、人間都合の行動が、結果的に彼女の命を奪ったのだ。
人間は、熊にとって恐怖の対象でなければならない。
それこそが、現状で熊を守ってやれる唯一の方法なのだ。
だから僕達は、自然の中に赴くときは、「お邪魔します」の気持ちを忘れないようにしなければならない。
自然界に人間界の痕跡を残すことは、彼等の生活を脅かすことになる。
彼等は敵ではない。
互いに畏怖と敬意を持って、共存することはできるはずなのだ。
え、えーーと。
すまん。
どうしてもいつもの軽いノリで終われなかった。
ソ、ソーセージィィーーー!!(無理やり)
サバイバルポイント
①最優先で遭遇しない努力をする
②集団で行動する
③熊撃退スプレーは持っておく
④【遭遇時】背中を見せて走って逃げてはならない
⑤【遭遇時】強気で正面を向いたまま20m以上離れる、視界から消える
⑥【遭遇時】奪われたものは取り返さない
⑦【遭遇後】即下山して報告する