今回は、史実をもとにしたフィクションから、遠い未来を舞台としたSFまで、「疫病」が登場する漫画を選んでみました。
主人公たちはその時、どうふるまうのか?
「with コロナ」の時代を生きる私たちに、きっと良いヒントを与えてくれるでしょう。
『片喰と黄金』
著者:北野詠一
掲載誌:ヤングジャンプ
出版社:集英社
単行本3巻まで発売中
『片喰と黄金』あらすじ
19世紀、ジャガイモ飢饉にあえぐアイルランドから、ゴールドラッシュに沸くカリフォルニアを目指す二人がいました。
すべてを失い何も持たぬ主であるアメリアと、アメリアに付き従うコナーです。
目的はただひとつ、一攫千金!
飢えも知らない、病気も知らない、子どもも孫もその先もずっと何の苦労も要らないような大富豪になるために!
フォーティナイナーズとなった二人は過酷な旅を続けます。
『片喰と黄金』おすすめポイント
アメリアはもともと地主の娘。
とはいえ、飢饉により彼女には財産と呼べるものはなく、自分の食べる物すらままなりません。
そんなアメリアに、従者であるコナーは絶対の信頼を置き、無謀とも言える道中もとことん尽くしまくります。
彼らの強固な絆の背景には、天然痘の存在がありました。
「ソーシャルディスタンス」という物理的な距離が必要とされる今ですが、お互いを思いやる気持ちを持つことで絆を強め、心の距離を縮められる時なのかもしれません。
『純潔のマリア』
著者:石川雅之
掲載誌:good!アフタヌーン
出版社:講談社
単行本全3巻
『純潔のマリア』あらすじ
中世ヨーロッパの百年戦争の最中。
森に住む魔女・マリアは、人々を救うことをしない天界に抗い、使い魔のアルテミスを使役して戦場を攪乱、人間たちに戦争をさせまいと動いていました。
しかし天界は、「戦争は人間の世の摂理」であるとし、それに干渉するマリアのことをよく思っていません。
とうとうマリアに大天使・ミカエルから、とある裁きが下されることになるのでした。
『純潔のマリア』おすすめポイント
マリアが無駄だと知りながらも摂理に抵抗するのは、疫病で滅んだ村との関わりがあったから。
その疫病こそ、当時の人口の30%を奪ったと言われる黒死病(ペスト)です。
百年戦争と黒死病、そして、それらが招いた教会の権威失墜は人々の死生観に大きな影響を与え、「死の舞踏(ダンス=マカブル)」と呼ばれるモチーフが多く描かれるようになりました。
マリアはそんななかで、信念を貫こうとしたのです。
社会不安は周りに流されることから生まれます。
また、分かったような顔をして「仕方ない」と諦めてしまってはいませんか。
己を見失わず、時に抗うことも必要だということがマリアの姿から見えてきます。
『11人いる!』
著者:萩尾望都
掲載誌:別冊少女コミック
出版社:小学館
単行本・文庫版など発売中
『11人いる!』あらすじ
人類が宇宙のあちこちの惑星へと生活圏を広げ、それぞれの環境に適応した進化をし、独自の文化を育むようになった未来の物語。
「宇宙大学国」の最終試験に集まった各惑星出身の若者たちに課せられたのは、チームごとに外部と接触せず宇宙船内で53日間生き延びること。
各チームは10人構成。
ところが主人公・タダの乗った宇宙船「白号」には、一人多い「11人」いたのです!
『11人いる!』おすすめポイント
物語のクライマックスで登場するのが、宇宙の疫病「デル赤斑病」。
デル赤斑病への恐怖により、チームメンバーは疑心をつのらせていき、メンバーの粛清をしようとする動きにまで発展してしまいます。
パニック状態で彼らが最終的にとった行動とは?
私たち人類がなるべく多く生き残るためには何を大切にすべきか、一人ひとりが考え、選択する時である今、ぜひ読んでおきたいSF漫画の名作です。
サバイバルポイント
ソーシャルディスタンシング、リモートワーク、移動自粛・・・
いつ終わるのか分からない先行きの不透明感、閉塞感・・・
「with コロナ」の生活は、時に、孤独や不安を感じさせるものです。
そんな時は、疫病が登場する作品を中心に漫画の主人公たちに思い切り感情移入して、共感してみてください。
共感は安心感を生み、あなたを元気にしてくれますよ。