「新しい生活様式」において、人々がもっとも不満に思っていることは「人生の楽しみが減ってしまうこと」だという調査結果があります。
そんななか、これからの新しい楽しみとして提案されているのが、「マイクロツーリズム」や「スモールツーリズム」。
遠くへ出かけるのではなく、あえて身近な場所で楽しむ過ごし方です。
「with コロナ」のこれからを充実させるため、漫画からマイクロツーリズム、スモールツーリズムのきっかけを見つけてみませんか?
『もっけ』
著者:熊倉隆敏
掲載誌:アフタヌーン
出版社:講談社
単行本全9巻
『もっけ』あらすじ
檜原静流と檜原瑞生の姉妹は、母の実家に預けられて生活しています。
それというのも、それぞれ「もののけ」を呼び寄せやすい体質を持つため。
姉妹の体質に理解のある祖父の元、二人は様々なもののけと出会い、成長していきます。
『もっけ』おすすめポイント
妖怪ものですが、ホラー系ではありません。
のんびりした田舎で起こる、ちょっと不思議な出来事を一話完結型で描いています。
中にはちょっとヒヤリとする話もありますが、先人の知恵や教訓を伝えようとした結果だったりするのです。
それらについて、分かりやすく解説してくれるのが主人公姉妹の祖父。
彼は、地元の歴史民俗資料館の顧問をしており、地域の民俗学的事情に非常に詳しいのです。
お住まいの街にも、小さな祠や石碑があったりしませんか?
また、近所の寺社の縁起、地元のお祭りの由来を知っていますか?
古都に住んでいなくても、きっと地元にも古くから伝わる何かがあるはず。
地名の由来などの書かれた看板を見つけたら、読んでみるだけでも意外と楽しいものですよ。
地元の言い伝えや風習、お祭りなどを知ることで、より深く街を理解して歳時記を楽しむきっかけになる作品です。
『ぐるぐるてくてく』
著者:帯屋ミドリ
掲載:LINEマンガ
出版社:LINE Digital Frontier
単行本3巻まで発売中
『ぐるぐるてくてく』あらすじ
主人公・小路歩は豊島南高校一年生。
散歩部に所属しているけれど、部室ではついついゲームで遊びがち。
そんな彼女に散歩の楽しさを教えようと歩きへ誘うのが、二年生の相生葵。
方向音痴の葵と空想しがちな歩を中心に、迷子も寄り道も楽しい散歩部のお散歩を描いています。
『ぐるぐるてくてく』おすすめポイント
近所を歩くことの最大の利点は、安心して迷うことができること。
萩原朔太郎の『猫町』ではありませんが、迷うことでいつもの街並みが驚くほど良く映ることもあるものです。
そのような「迷うことの楽しみ」を描いたお散歩漫画だと言えます。
迷い道や寄り道にこそ、お散歩の醍醐味があるというもの。
癒しを求めるもよし、猫との出会いを期待するもよし、ゲームの世界を想像するもよし。
自分のペースや気分に合わせて、ぐるぐる迷いつつ、てくてく歩くことを楽しむきっかけになる作品です。
『マホロミ 時空建築幻視譚』
著者:冬目景
掲載誌:ビッグコミックスピリッツ
出版社:小学館
単行本全4巻
『マホロミ 時空建築幻視譚』あらすじ
主人公・土神東也は大学生。
建築家であった祖父の建てた家に一人で暮らし、自身もまた建築を学んでいるものの、生前の祖父とはあまり交渉がありませんでした。
解体の決まった古い洋館の測量中、彼は建物の記憶を視る能力に目覚め、祖父の過去に触れることになります。
『マホロミ 時空建築幻視譚』おすすめポイント
冬目景作品の背景で印象的なのが、たびたび描かれる古い建築物。
時の止まったような建築物はモラトリアムの舞台にぴったりで、その独特な雰囲気は作品の魅力となっているのですが、特に『マホロミ 時空建築幻視譚』では建築が物語のメインテーマになっています。
中には実在の建築をモデルにしたものもあり、もしかしたら見たことのある場所が登場しているかもしれません。
有名でなくても、身近に気になる建物・街並みはありませんか?
洋館風の個人宅、モザイクタイルのある商店、破風屋根の銭湯、よく見ると凝った並べ方のブロック塀、看板建築・・・
好みの建物が見つかると、いつもの景色もグンと新鮮に映るものです。
どうしてここにそれがあるのか?を考えるのも楽しいでしょう。
建築科の学生が主人公なだけに建築についてのアレコレが散りばめられていて、自然と興味も知識も深まります。
建物に注目し、街並みを楽しむきっかけになる作品です。
サバイバルポイント
灯台もと暗し。
何てことのない街だと思っていた地元にも、きっと興味をくすぐる何かがあるはず。
素敵な発見がありますように。