突然ですが。
センメルヴェイス・イグナーツ(イグナーツ・センメルヴェイス)という偉人をご存じですか?
19世紀中期にあって「手洗い」の大切さを訴え続けたハンガリーの医師です。
彼は産科に勤務した経験から、手洗いで多くの命を救うことができるという仮説を立てましたが、それは当時の常識とはかけ離れたものでした。
そのために、あろうことか彼は医学界を追放され、精神を病み、この世を去りました。
しかし今こそ、彼の声が必要な時なのです!
みんな、感染症が怖ければ手を洗うんだ!
・・・ということで。
センメルヴェイス・イグナーツの声を現代に届けるヒロイン・伏木あかりの登場する漫画『白暮のクロニクル』を参考に手洗いの重要さを学んでいきましょう。
テキストは『白暮のクロニクル』
ゆうきまさみ作『白暮のクロニクル』は、2013年から「週刊ビッグコミックスピリッツ」で連載された漫画。
2017年に完結し、単行本全11巻が刊行されています。
不老不死(死ぬときは死ぬ)の人間・オキナガが関係している事件「オキナガ案件」を、伏木あかりと、オキナガの一人で殺人事件マニアである雪村魁が解き明かしていくミステリです。
あかりは厚生労働省の職員で、オキナガの監督を担当する夜間衛生管理課に所属。
渋谷区の保健所で研修中に「オキナガ案件」に遭遇したことで、あかりは魁の連絡係になりました。
「究極超人あ~る」の大戸島さんご、「パトレイバー」の泉野明から続く、「ショートカット・太眉・公務員」ヒロインです。
第一巻「犬は眠れぬ羊と踊る」第一話の冒頭で、研修中のあかりは保健所職員と飲食店を訪ねます。
そこで彼女が見たのは殺人事件現場。
しかも、あかりが第一発見者となってしまいます・・・
ショックで駆け込んだトイレから戻ると、現場には警察が。
あかりは思わず「そこらへんのものを素手で触らないでください」と叫びます。
警察は「素手で触るわけないだろ!警察を何だと思ってんだ」と、手袋をはめた手をひらひらさせてあかりに見せます。
この時、警察とあかりには認識のズレがありました。
あかりが「素手で触るな」と叫んだ理由の一つは、もちろん現場の保護のため。
事実、この後、調理台がすでに警察によって荒らされて拭き取り調査さえできなくなっていることを、あかりはなげいています。
また、警察も、あかりが「触るな」と叫んだ理由は現場の保護のためだと思ったでしょう。
ですが、あかりにはもう一つ理由がありました。
これが、警察とあかりの認識のズレです。
あかりは「素手で」触るなと叫んでいます。
さらに「帰ったら必ず手を洗って・・・」とも。
実は、殺人現場となったのは食中毒のあった飲食店のキッチンでした。
あかりたち保健所職員がこの飲食店に来た本来の目的は、食中毒の調査のため。
そう。
あかりは、食中毒の原因物質の付着を心配していたのです。
あかりは続けます。
「いいですか!?たとえ今手袋をしていたとしても」
「外すとき必ず素手でつまみますよね?」
「ですから念のために、というか絶対に手洗いをしてください!」
おお!まさに現代のセンメルヴェイス・イグナーツ!
第1回感染予防選手権、優勝は手洗いさん!
たしかに、マスクや手袋は菌やウイルスに対する有効な防衛手段です。
しかし、外すときに菌やウイルスが手に付着してしまうなど、扱い方によっては危険もあります。
このような危険に対して、「手洗い」はとても効果的な感染予防法。
その力は、最強クラスと言えるでしょう。
ヒトが感染症に罹患する原因の多くは「手」です。
私たちの手は日常的に多くの場所に触れるため、多くの菌やウイルスが付着しています。
菌やウイルスの付着した手で目・鼻・口に直接触れれば、当然、感染症の引き金になります。
あるいは、手によって拡散された菌やウイルスが付着した物品・食品から、菌やウイルスが体内に侵入することもあります。
●2~3分に1回は顔を触っている!?
手がどれほど菌やウイルスを目・鼻・口へ運びやすいかが、よく分かる研究結果が2016年に発表されています。
この研究によると、人が1時間に手で顔に触れる回数はなんと「平均23回」。
2~3分に1回は触っていることになります。
手は非常にまずいってことが分かりますよね。
だからこそ、手に付着した菌やウイルスをダイレクトに洗い流すことができ、菌やウイルスの侵入を防止できる手洗いは最強の感染予防法だと言えるのです。
●手洗いで菌・ウイルスは0.0001%に!
では、手洗いにはどれくらい「洗い流す」効果があるのでしょうか。
条件別に手洗いによるウイルスの除去効果(ウイルスの感染価と遺伝子量測定)を調べる実験(※)では、流水ですすぎ洗い15秒のみの場合であっても、ウイルスの感染価・遺伝子量ともに手洗いをしない場合の約1/100(約1%)に減少するという結果が出ています。
※ 東京都健康安全研究センター微生物部
さらに、せっけん使用でもみ洗い10秒間+流水15秒間の場合、約0.01%まで減少。
さらにさらに、せっけん使用でもみ洗い10秒間+流水で15秒間を2回の場合、0.0001%まで減少。
0.0001%って、ほぼジェノサイド完了じゃないですか?
こうした実験結果から、日本医科大学特任教授の海原純子先生は、効果的な手洗いの手順として次のような提案をしています。
・「流水手洗い15秒」を手洗いの基準にする
・食前や外出後、トイレ後などは「せっけん手洗い10秒+流水手洗い15秒」を2回
よく15秒の参考に「Happy Birthday (to You)」の歌があげられていますが、好きな曲を思い浮かべながら手洗いしたいという方はこちらをどうぞ。
手洗いの手順に合わせて歌詞が表示されるポスターを作成できるツールです。
アルコール除菌より、マスクより、手洗いだった!
手洗いの有効性は分かりましたよね。
一方で、手に付着した菌やウイルスから身を守る方法として「アルコール除菌」もあげられます。
もし、手洗いかアルコール除菌かを選ぶとしたら、どちらにすべきでしょうか。
アルコール除菌より手洗いのほうが優れているとしているのは、CDC(米国疫病管理予防センター)。
アルコール除菌では手の汚れやゴミを取り除いてキレイにすることはできないので、せっけんと水での手洗いがおすすめなんだそうです。
では、「マスク」と手洗いなら?
イングランド公共衛生庁のジェイク・ダニング博士は「マスクの着用は病院環境以外では有効だという証拠はほとんどない」とBBCに答えています。
マスクを使用するなら、正しい着用、こまめな交換、そして安全に外すことが重要とのこと。
「マスクを長期間着用することで、推奨されている予防方法を守らなくなっていくという研究結果もある」という、意識が緩むリスクも指摘。
手を清潔にして衛生環境に注目するほうが感染予防に良い、というのがダニング博士の意見です。
つまり、マスクよりも手洗いを推奨しているわけです。
まとめ
まとめると・・・
・手がやばい、だから手洗い!
・手に付いた菌やウイルスは「(せっけんもみ洗い10秒間+流水15秒間)×2」でほぼジェノサイドできる!
・アルコール除菌 < 手洗い!
・マスク < 手洗い!
やっぱり、手洗い最強説。
「せっけん手洗い10秒+流水手洗い15秒を2回」を習慣にしましょう!
手洗いでレッツサバイバル!
そして。
センメルヴェイス・イグナーツに敬意を表しつつ、世の平和を祈ります。
サバイバルポイント
使い捨てのビニール手袋が売り切れてました。
コロナ予防とかじゃなくて、
ハンバーグをこねたかっただけなのに。