昔、昔。
ダクトテープは北海道はオホーツク、知床半島を旅しておりました。
なにしろ、北海道だわ、オホーツクだわで、とにかく帆立がむやみやたらと美味しいの。
そしてたくさん出るの。
たくさん・・・
そう、たくさん帆立を食べるから、貝殻のゴミもたくさん出るの。
きょろきょろ目玉とピーピー笛を貝殻に付けた帆立人形のお土産グッズにして捌ける量じゃないの。
冗談じゃなく、23区最高峰・新宿戸山の箱根山くらいに帆立の貝殻が積み上げてあるのをオホーツクのあちこちで見たの。
「これ、どうするんですか?」って聞いたら、一部は使い道があるけど排出量には全然追いつかず、わりと社会問題になってる、でも頑張って使い道考え中!だと説明してくれた帆立屋のおじさん・・・
やったじゃん!
「COVID-19」いわゆる新型コロナウイルス対策として、不足している消毒用アルコールの代わりに帆立貝の貝殻製品を導入した小学校があるというニュースを見てびっくりしたのがつい先日。
北海道の帆立おじさんが今どうしているかは分かりませんが、帆立貝の貝殻の使い道が見つかった!と胸熱になったのでした。
「貝殻が消毒用アルコールの代わりになる」ということを、こちらの漫画を参考に説明していきましょう!。
テキストは漫画『Dr.STONE』
『Dr.STONE』は、稲垣理一郎原作、Boichi作画、くられ科学監修の少年漫画です。
2017年~「週刊少年ジャンプ」で連載、2019年にはアニメ化もされました。
主人公の一人は3700年後の地球で目覚めた高校生、大木 大樹。
そこは原始の世界でした。
人類は3700年前に起きた謎の現象によって石化し、文明と呼ばれる物はすべて失われていたのです。
もう一人の主人公で幼なじみの石神 千空も、彼の近くで目覚めていました。
純粋で体力のある大樹と、科学の徒である千空は、それぞれの能力をもって大切なものの復活と再び科学の灯がともる文明社会の創造を目指し、行動を開始します。
貝殻エピソードが登場するのは、Z=4「純白の貝殻」。
仲間として、高校生格闘家の獅子王 司が加わった回です。
科学担当の千空、体力担当の大樹、狩猟担当の司。
大樹は、知力・体力・武力の三銃士が揃った!と喜びます。
狩猟による食料の確保と科学による保存の体制が整い、文明の第一歩を踏み出せる状態になったことは千空も認めます。
そこで、千空が二人にクイズを出しました。
「科学文明にまず欲しい、一番重要なモンはなんだ??」
ちなみに正解者には100億点だそうです。
さあ、何だと思いますか?
大樹「スマホか?」
司「鉄・・・かい?」
千空によると、鉄はもうちょっと後でも良いそう。
欲しいのは一体・・・
答えは、炭酸カルシウム!
もっとも重要なのは「炭酸カルシウム」でした。
はい、ダクトテープさん100億点!
炭酸カルシウムとは、千空が大樹の雑なアタマでも分かるように説明したところによると「グラウンドの白線引き」のこと。
斜めにすると粉が出てくるアレに入っている白い粉の正体は、主に石膏や炭酸カルシウムですが、なかには帆立貝の貝殻から作られた炭酸カルシウムもあるとか・・・
そうです!
いよいよ帆立貝の貝殻の山が役立つ話ですよ!
千空は、砂浜の貝殻から炭酸カルシウムを得ようとします。
さっそく、大きな籠にたくさん貝殻を集めて砕く大樹。
そして、それを加工する千空。
「炭酸カルシウムほどそそるもんもねえ」と千空は笑います。
千空の言う炭酸カルシウムのそそる使い道とは・・・?
ひとつは「農業」
土壌改良剤として使用します。
たしかに、植木鉢に貝殻を刺してるお宅ありますよね。
次に「建築資材」
砕いた貝殻を焼いて砂と混ぜるとモルタルに。
大きめの建物、かまどを作ることができます。
三つ目に「浄化」
そして、物語上もっとも重要なのが三つ目の使い道である「浄化」です。
「病気=ゲームオーバーのこの世界」と千空が言うように、「医者はどこだ」がまったく無駄な原始の世界でのサバイバルにおいて、清潔を保つのは命を保つということ。
千空は貝殻と昆布を加工して石けんを作り、それを「医者代わりの命の石、Dr.Stoneだ!」と呼びました。
実はもう一つ、ものすごい使い道があるのですがネタバレしすぎるのであえて伏せておきます。
千空がもっとも重要な使い道と考えていた「貝殻の炭酸カルシウムによる浄化作用」。
これがポイントです。
ダクトテープが見たニュースで、小学校が消毒用アルコールの代わりに導入した貝殻製品とは、帆立貝の貝殻から作られた貝殻焼成カルシウム製品だったのです。
貝殻焼成カルシウムとは、細かく砕いた帆立貝などの貝殻を高温で焼成して得られる物質のこと。
除菌・抗菌・消臭の効果があることが注目されています。
貝殻を構成しているのは、主に炭酸カルシウムとコンキオリンという複合タンパク質。
高温で貝殻を焼くことで、炭酸カルシウム(CaCO3)から二酸化炭素(CO2)を分離させ、酸化カルシウム(CaO)を取り出すことができます。
貝殻の炭酸カルシウムから取り出した酸化カルシウムが「貝殻焼成カルシウム」というわけで、白線引きにも使われているのがコレです。
貝殻焼成カルシウムで除菌・抗菌できる理由
貝殻焼成カルシウムの除菌・抗菌の仕組みを説明しましょう。
貝殻燃成カルシウムはph12.7のアルカリ性で、その水溶液はph14に近い強アルカリ性電解質になります。
強アルカリは、たんぱく質を構成するアミノ酸のペプチド結合を弱めて加水分解する性質を持っています。
この強アルカリの性質により、菌やウイルスの細胞壁のたんぱく質を分解して除菌・抗菌効果を発揮するというわけ。
データによっては、短時間で90%以上の菌を除去した例もあるそうです。
ちなみに、酸化カルシウム(生石灰)を水に溶かすと数百℃の発熱が起こりますが、貝殻焼成カルシウムは比較的、発熱反応が小さく、従来の酸化カルシウムよりも扱いやすいという利点があります。
貝殻焼成カルシウムの利点はこれだけではありません。
一般的に除菌・抗菌に使われている消毒用アルコール(エタノール)は、菌のたんぱく質を変質させたり、ウイルスの持つ「エンベロープ」という油膜を破壊したりすることでそれらを不活性化します。
2020年現在、世界中で猛威をふるっているCOVID-19(新型コロナウイルス)や、毎年流行が繰り返されるインフルエンザウイルスは、エンベロープを持つタイプのウイルスなのでアルコール(エタノール)が有効です。
ですが、なかにはエンベロープを持たないウイルスも存在します。
たとえば、胃腸炎を引き起こすノロウイルスはエンベロープを持ちません。
そして、エンベロープを持たないウイルスにはアルコール(エタノール)が効きません。
しかし、貝殻焼成カルシウムの強アルカリならエンベロープの有無にかかわらず加水分解による除菌効果を発揮してくれます。
より広い範囲の菌・ウイルスに効果があることも貝殻焼成カルシウムの大きな利点なのです!
しかも貝殻廃棄の問題を解決でき、そもそも貝殻なので排水が河川を汚すこともないというサスティナぶり。
貝殻焼成カルシウムの作り方
作中では、砂浜で拾ってきた貝殻をハンマーで細かく砕いて焼いていました。
これは、貝殻の主成分である炭酸カルシウムを強い火力で焼くことにより二酸化炭素が放出され、酸化カルシウムが残る熱分解を起こすためです。
炭酸カルシウムの熱分解に必要な温度は825℃ですから、かなりの高温をキープする必要があります。
作中では、ハマグリのような二枚貝や巻き貝などが見られましたが、特に抗菌効果が高いのは帆立貝だそうです。
土壌改良、モルタル、そして除菌・抗菌まで、とっても有益な炭酸カルシウムはまさに「そそる物質」。
炭酸カルシウムが貝殻から得られることは、ぜひ覚えておきましょう。
貝殻を拾って、砕いて、焼いて、レッツサバイバル!
貝殻廃棄の問題もクリアできて、環境的にもサバイバル!
サバイバルポイント
手ピカジェルがピンクと黄色の2種類あるのをご存じですか?
違うのは殺菌力で、黄色のほうが強力です。
ピンクはエンベロープのあるウイルスにしか効きませんが、黄色はノンエンベロープのウイルスにも効きます。
つまり、インフルを予防したいならピンクでOKだけど、ノロウイルスも予防したいなら黄色の手ピカジェルじゃないとダメ。
で、黄色の手ピカジェル並みの働きが期待できるのが、本編でご紹介した炭酸カルシウム(帆立貝)というわけです。