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マンガ『帝一の國』を読んで数百メートルの距離でも使える糸電話の有効性を学ぶ

[WRITER] ダクトテープ

さてみなさん。

実写版が大好評の漫画原作の劇場公開映画と言えば?

 

ビジュアルの再現度が高くて・・・
キャラクタが原作そのまんまで・・・

 

そう、満場一致であの実写化作品でしょう。

 

それはずばり『帝一の國(ていいちのくに)』!

 

『帝一の國』は「ジャンプスクエア」に連載されていた古屋兎丸先生による漫画。
七三分の黒髪の艶が!デートの一張羅が!和太鼓が!
全てテンション高めに三次元化された実写映画が高評価を受けています。

 

時は、昭和。
主人公は、赤場帝一。特技はピアノ。
彼の止まらない野望は、超名門男子校・海帝高校の生徒会長になること。

というのも。

元々士官学校であり、現在でも各界に通じる海帝高校。
その生徒会長をつとめた人物には、内閣への道が約束されているのです。

総理大臣になり、日本を世界一の國にしたいと願う帝一の野望の第一歩が、海帝の生徒会長というわけなのです。
海帝OBの通産省官僚で、かつて生徒会長選に敗れた帝一の父にとってもそれは悲願でありました。

しかし、海帝生徒会長選は甘くはありません。
頭脳、体力、人望はもちろん、知略、謀略、奸計、洗脳、実弾、マヨネーズ、マイムマイム・・・あらゆるものが渦巻く選挙戦です。

そこに身を投じて行く帝一、帝一の伴侶として身を尽くす光明、そしてライバル達によるグランギニョルが展開していくのでした。

さて、そんなグランギニョルの箸休めが、帝一と恋人・美美子の逢い引きシーン。

 

夜、帝一はロミオよろしく美美子の窓の下へ。
合図に気づくと美美子は窓から紙コップを投げます。
家人に見つかることを怖れる二人は、糸電話を使ってささやきあうのです。

 

なんと奥ゆかしく、情緒溢れるお付き合いなんでせうね。
LINEで30秒おきにイチャコラしてる奴ら!お前も見習えよこの情緒!コンチクショー

 

この糸電話という手段には、名門海帝に最高得点で入学した帝一の賢さと、少年らしい無邪気な子供っぽさがあらわれています。
そして、その子供っぽい手段は、美美子に物足りなさを感じさせてもいました。

でも、美美子!
糸電話をあなどっちゃいけないよ!

 

この糸電話シーンから我々が学ぶべきものは、奥ゆかしい情緒のほかにもうひとつあるのです。

それは、糸電話がとっても使える優秀な通信ツールであるということ。

 

美美子の部屋は二階にあります。
一般的な天井高が2.7mなので、帝一と美美子の距離は花壇なんかも入れてざっくり5m~10mくらいでしょうか(ざっくり)。
この距離で会話をしようとすると、結構大きな声を出さなくてはなりません。
しかし、糸電話であればその心配は無用。

 

糸電話は、

 

素材さえ選べば数百メートルの距離での通話が可能

 

です。
条件を統一した上での正確な世界記録というものは残念ながら存在しないようですが、いくつかの実験の記録は残っています。

 

ひとつはTV番組の企画で、二棟のマンション間での通話。
この時の糸の長さは、300mでした。

もう少し糸電話をパワーアップしてナイロン製の釣り糸とホーン型の受信器にした実験によれば、500mの距離でも通話可能だったそう。

 

音は2m離れると6dB、50m離れると34dB減衰します。
また、500mの距離でも肉声は聞こえますがそれにはかなり大声を出す必要があり、詳細を明瞭に伝えるというわけには行きません。
ところが、上記のナイロン製釣り糸の糸電話の実験では、500m先でもはっきりと言葉が通じていました。

 

糸電話の材料は、糸と紙コップというごく身近なもの。
特別な技術も道具もいらず、誰でも簡単に作ることができます。

 

①紙コップ×2

②糸(長さは任意)

③セロハンテープ(糸を紙コップに止める)

 

あとは、紙コップの底に穴を空けて、外から中に糸を通して内側で固定するだけ。
セロハンテープがない場合は、つまようじなどを追って短くしたものを、通した糸に巻き付けて固定する、なんて方法もあります。要するに、糸が紙コップの内側で紙コップに接触した状態で固定されていればいいのです。

このシンプルな材料と構造で、ある程度の距離と意思の疎通がはかれるということは、サバイバルのためにぜひ覚えておきたい知識です。

 

実際に、こんなことがありました。

平成27年9月関東・東北豪雨の際、茨城県の鬼怒川堤防が決壊、住民3800人が孤立と言う状態になったことがありました。

常総市に住む女性は、自宅二階で孤立。
十数m離れた隣家に住む姉妹と連絡をとろうにも、相手の携帯電話はバッテリー切れ。
そこで思い付いたのが、糸電話でした。
紙コップを刺繍糸でつなげ、糸電話を作成。
夫が屋根づたいに糸電話を隣家へ投げこんで、通信に成功。
この糸電話のおかげで、食料の乏しかった姉妹に差し入れができた他、なんといってもお互い孤立状態にあった中で声を聞けたことに救われたそうです。

 

ちなみに、上空のヘリコプターの音で、窓越しに大声を出しても聞こえなかったそう。
距離だけでなく、騒音の中での通信にも有線の糸電話が強いということが証明された事例です。

 

鬼怒川のケースでは刺繍糸でも十分役に立っていますので、基本は身近にある糸でも十分なようです。
一方、500m先との通信に成功した実験では、ナイロン製釣り糸を使用していました。
音を伝えるためには、振動を損なわない材質が良いので、絹糸やナイロン糸がより向いています。
毛糸のような太い糸は不向きですので注意。

 

何にしても、わりと手に入りやすい材料で大丈夫です。

 

ということで、海帝中学校生徒会長を経て海帝高校入学式では新入生代表に選ばれた男・赤場帝一の選んだ糸電話というツールがいかに素晴らしいものか、おわかりいただけたでしょうか。

数年前、携帯電話会社のCMで弄られたのをきっかけに鳥取砂丘の名物を糸電話にしようという動きが商工会のもあったようですが、いまからでも間に合うぞ鳥取県!

 

このあたりで糸電話について、まとめ。

 

・糸電話は最大500m先と通信可能
・周囲の騒音の影響を受けにくい
・糸電話の材料、構造はシンプルで入手および作成が容易
・バッテリーいらず
・毛糸は向いていない

しかし、シンプルゆえに、シンプルな欠点もあります。

①弛ませてはいけない。
②途中、何かに接触させてはいけない。
③基本、直線でしか使えない。

振動である音が途中で途切れてしまったらどうにもならない……ということですね。

 

とはいえ、サバイバルなその瞬間のために、BBQで余った紙コップや、粗品で貰ったソーイングセットの糸は、大事に保管しておきましょう。

サバイバルポイント

もしもの場合、携帯電話のバッテリーが切れていたら、糸電話を思い出せ!