マンガ・アニメを観て生き残れ!

マンガ『ARMS』を読んで群集心理の恐ろしさから逃れる方法を学ぶ

[WRITER] ダクトテープ

肉体は鎧で守ることができますが、心は無防備なもの

無防備な心は、時に思わぬ暴走をすることがあります。

 

力が欲しいか!

 

ということで。

 

今回はマンガ『ARMS』から、心の暴走のひとつである群集心理について、ちょっと学んでみようかと。

 

『ARMS』は、1997年~2002年に「週刊少年サンデー」にて連載されていたアクション漫画です。

主人公は、炭素生命体と珪素生命体のハイブリッド生命体である”ARMS”を移植された高校生・高槻涼。

全ては仕組まれていた戦闘の日々から、彼が日常を取り戻すまでが描かれています。
ちなみに、ルイス・キャロル原作の「不思議の国のアリス」ネタが散りばめられていたりもします。

 

そしてこれから大事なことを言いますね?
「ユーゴーかわいいよユーゴー」
「僕は、天使ユーゴーちゃん!」

 

はい、気が済んだので話を進めますよー

 

参考にするエピソードは、第6巻収録に登場する作戦「スナーク狩り」
この作戦は、主人公達を捕獲するために、超人部隊・レッドキャップスにより実行されたものです。

「スナーク狩り」の呼称は、不思議の国のアリスを多々引用しているところからも、ルイス・キャロルの珍しく暗い感じの詩、「スナーク狩り」(そのまんま)かと思われます。宮部みゆき先生の小説にもあったなぁ、「スナーク狩り」。「スナーク」は、「ジャバウォック」という同じように、ルイス・キャロルの詩に出てくる架空の生物のことです。

 

まずレッドキャップスは、主人公の暮らす街・藍空町を孤立させ、軍事力でもって制圧。
市民がパニックに陥ったところへ、マスコミを使い、暴力とともに自らの要求を伝えます。
その要求とは、決められた時刻までに市民の手で主人公達を捕獲し、差し出すこと。
さもなければ、市内数百カ所に仕掛けた爆弾を一斉爆破、市民の無差別虐殺を実行する・・・というのが、作戦の概要。

 

「スナーク狩り」において、市民が市民を敵視せざるを得ないという恐ろしい状況を作り出すのに利用しているのが、人の心です。

 

人の心とは、実に不完全です。
外部から入ってくる情報に、人の持つ認識力や中立性は左右されることもあります。
つまり、計画的に操作された情報を与え続けた場合、計画者の目的遂行に繋がるような判断を対象者にさせることも可能だということ。
これを利用した戦い方が心理戦なのです。

真田幸村のパパは心理戦が得意でしたね。

 

そして「スナーク狩り」では、特に群集心理を利用しています。

 

群集心理とは群集に特有の心理状態のこと。
人の心理には違いがないのですが、群集ではなぜか個人とはまったく違った心理状態になるのです。

 

例えば、こんな例があります。

 

アメリカで、年に一回開かれる「バーニングマン」という五万人もを集めるな野外イベントがあります。
一週間に渡り文明から隔絶された平原で共同体を築きあげ、自己表現をしながら生き抜くというもの。
このお祭りの特徴は、傍観者がいないこと。
全員が参加者であるという意識を持って行動します。
そして・・・参加者はなぜか半裸および全裸で過ごし始め、最終的には五万人全員全裸状態になること。
不思議なもので、参加者によると、周囲が半裸および全裸だと逆に着衣に疑問を持ち始めるのだそうです。
これは、群集心理のひとつのあらわれだと言われています。

 

このように、群集心理は、普段の行動からの逸脱や普段は持たないような大胆な考えを引き起こすと言われています。
バーニングマンのようなアートイベント、スポーツの応援、ロックフェスでの盛り上がりや革命など、人は群集心理によって大きな力を発揮することもあるでしょう。

 

しかし、ひとたび舵を取り損なえば恐ろしいことにも繋がりかねません。
多くの虐殺、暴動、株式市場の急変、ネットの炎上、いじめなども群集心理によるものです。

 

群集心理の主な特徴をまとめてみます。

 

◇匿名性
普段ははっきりと「私」という意識をもっているはず。

私という個人。
私という個人の立場。
私という個人の来歴。
それらのために、責任感や正義感を持って、社会的行動をとるように努めています。

ところが、群集の中のひとり=モブになってしまうと、「私」を喪失してしまいます。
そうして、「私」であったときには感じていた責任感や正義感が薄れ、社会的行動から逸脱しやすくなってしまうのです。

 

◇被暗示性
雰囲気に飲まれるというやつです。
大勢の中の一人になると、大声・号令・命令に従ってしまう、他の人の感情に引っ張られてしまう、などということが起こります。
暗示にかかりやすくなってしまうのです。
羽毛布団のセミナー商法からヒトラーまで、この「群集の被暗示性の強さ」を利用しています。

 

◇感情性
大勢の中で感じる感情はより強く、大きいものになります。
感情的で、冷静でいられなくなり、判断力が低下します。

 

◇強くなった感
大勢で同じ感情や意見を持ったり、大勢で行動すると、それだけで強くなったと錯覚しやすくなります。

 

「匿名性」により無責任になった群集を、「被暗示性」と「感情性」でもって煽ることで、「強くなった感」のある群集となった市民を主人公たちへけしかけるのが、今回の「スナーク狩り」。

「スナーク狩り」がいかに群集心理を巧みに利用した作戦であるかわかるかと思います。

作戦がうまく動き始め、襲いかかる群集。
しかし主人公たちは反撃ができません。
なぜなら、群集は「市民」だからです。

 

この状況を打破したのは、とある熱血漢の刑事の行動でした。

 

刑事は、群集に自らの名前を言ってみろと言います。

自分が何者であるか思い出させることで、個人の自覚を促したのです。
群集の一人一人が自分の名前を口にすると、みるみる群集は落ち着きを取り戻していったのでした。

 

恐ろしい群集心理ですが、このように個人の自覚を呼び覚ます事で、飲み込まれずに済むことがわかりました。
群集心理にのまれた人々に遭遇したら、個人の自覚を促すことで、危機回避が可能かもしれません。

また、群集心理に飲まれそうなときには、

 

自分の名前を口に出して言ってみる

 

と良いでしょう。

 

では、往年の「みんなのうた」の名曲を聴きながら、お別れいたしましょう。

なまえ~
それは~燃えるいのち~
ひとつの地球にひとりずつひとつ~

Every child has a beautiful name!
A beautiful name, a beautiful name!

呼びかけよう名前を~
すばらしい名前を~

サバイバルポイント

群集心理に飲み込まれそうなときは、自分の名前を言う。言わせる。