自分の身を護るために必要なことって何でしょう。
格闘術や護身術でしょうか。
水や食料を手に入れる技術でしょうか。
事故や災害への備えや知識でしょうか。
もちろん、それらも必要です。
でも、もうひとつ。
助けを求める
というのもサバイバルには大切なことです。
サバイバルというと、他人に頼るのは御法度みたいなイメージもありますが、サバイバルの古典『ロビンソン・クルーソー漂流記』でも、基本は救援待ちです。
救援を求めるために覚えておくと便利なのが手旗信号。
特別な機器を必要とせず、簡易な道具のみで、声の届かない距離へ信号を送ることができます。
しかも無電源という、まさにサバイバルにぴったりな遠隔通信手段です。
手旗信号がどれくらい優秀かというと。
それは、江戸時代中期から大正時代初期にかけて使用されていた「旗振り通信」のすごさから伺い知ることができます。
これは、米相場の伝達のために行われていたもので、山の上などの高所に設けられた旗振り所から旗振り所へと旗振り信号が伝えられていく、言わば「旗振り信号の伝言ゲーム」。
この旗振り通信によって、大阪から江戸までなんと8時間で相場が伝わっていたそうな。
人力でこれだけできるって言うのは、相当なことだとは思いませんか。
さて、江戸時代中期の旗振り通信をルーツとし、海軍で考案された手旗信号。
現在も海上自衛隊や海上保安庁をはじめ船上で使用されているだけでなく、海のボーイスカウトとも言うべき海洋少年団でも訓練があります。
そのため、一般に海上での通信のイメージがありますが、ボーイスカウトでも手旗信号の訓練があり実はわりと山岳でも使える通信手段なのです。
日本式の手旗信号で使用するのは紅白の旗、それぞれ一枚ずつ。
合計二枚の布があればOK。
右手に赤旗、左手白旗を持ち、基本姿勢を組み合わせてカタカナに似たポーズを取って通信します。
もちろん、基本姿勢を覚えておくのがベストですが、メモを携帯しておくだけでもいざという時に役立ちます。
そう、二枚の布さえあれば・・・
たった二枚の布さえあればと言いますが、そこは極限状態のサバイバル。
そのたった二枚の布が見つからない事だってあるかもしれませんし、着の身着のままの状態で救援を待つことだってあるでしょう。
はい。
ここで読んでおきたいのが、漫画『クライングフリーマン』の第二話。
唐突ですが、この先は小池式表記でお送りするンです。
『クライング・フリーマン』は、小池一夫原作&池上遼一作画という日本の至宝コンビよる劇画で、当然ですが名作。
ヒーロー(?)は「殺すたびに涙を流す陶芸家」、ヒロイン(?)が「丸眼鏡にチャイナドレス」というのも素晴らしいの一言です。
新進気鋭の陶芸家・火野村窯(ひのむら よう)はちょっとした正義感が災いし、チャイニーズマフィア「百八竜」の殺し屋に改造されてしまいます。
ミッション完了の度に己の運命に涙する窯の殺し屋としてのコードネームは「自由人(フリーマン)」。
さぞや自由になりたかろう、という意味からつけられました。
が。
悲しい殺人者となったかのように見えた窯でしたが、その後は・・・
まさに自由!
フリーマンとなった窯は、怒濤の展開で魔法使いを卒業し、妻を娶り、百八竜の後継者となり、悪い奴らはぶったたき、モテカワ愛されまくりで、そしてとにかくすぐ脱ぐ感じになっていきます。
そこンじょこらの「俺Tueeeee!」漫画はお呼びじゃありませン。
そんな『クライング・フリーマン』の第二話である『落花流水』のラストに、着の身着のまま状態での手旗信号のヒントがあるンです。
フリーマンが出会った日本最後のフィクサーの娘にして運命である女性・絵霧。
フリーマンと絵霧は、火野村の陶芸窯での再会を約束します。
そこへ復讐のために白真会が襲撃。
フリーマンは機転を利かせてこれをかわし、百八竜と連絡をとるため、岬に。
ここで使われた通信手段が手旗信号でした。
ところが、海水パンツ一枚にナイフ一本の窯。
どのように通信用の「旗」を用意したのでしょう。
通信しようと、岬の岩の頂上に飛び上がった窯はなぜか・・・
というかこの作品を読ンでいるとその「なぜか」の部分が「いつものように」に変わってしまうわけなンですが・・・
なぜか唯一身にまとっていた海水パンツを脱ぎ、全裸に。
そして、海水パンツの中からなンともう一枚、白いパンツが!
入場しながら、試合用マスクの上に着けたオーバーマスクを脱ぎ、客席に投げる仮面貴族・ミルマスカラスを彷彿とさせる重ね技です。何というスカイハイ。
窯は紅白のパンツを左右に持ち、ぐるぐると振り回します。
こうして、二枚の布を旗として手旗信号を送り、通信に成功したのでした。
こンな風に極限状態でも救援を求める信号を送ることができるのが、手旗信号なのです。
ところで、手旗信号は本当にパンツも構わないのでしょうか。
大きさや形の規定があったりするものではないのかと。
海上保安庁によると、現在、一般的に使用されている旗のサイズは二種類。
通常の40×35cmのものと、遠距離用の50×40cmがあるそうです。
ボーイスカウトの携帯している旗も同じサイズで、旗竿の長さは60cm。
しかしこれはあくまで慣習上のもの。
手旗信号の布や旗竿のサイズには、特に規定がないンだそうです。
つまりパンツでも手旗信号に使えると言うことになります。
また、これまで紹介してきた日本式の和文手旗信号の他に、国際的に使える欧文手旗信号もあります。
これには赤と黄に染め分けた二枚の旗(パンツ)を使用します。
セマフォア信号とモールス符号の送信があり、モールス符号の送信は徒手でも可能です(見えれば)。
どうやら着の身着のままでも、普段から紅白のパンツを重ね履きする習慣さえあれば手旗信号が使えそうだし、赤黄のパンツなら国際的にも通用しそうということがわかって来ました。
来ましたが。
無理にパンツでなくても、紅白もしくは赤黄のハンカチを二枚持ち歩くようにすれば良いような気もします。
インパクトはパンツに軍配ですが。
パンツかどうかはともかくとして。
布が二枚あれば、目視の範囲とは言え遠隔通信が無電源で可能な手旗信号は、サバイバル状況下での救援要請として優秀であると言うことを言いたかったンです。
さて最後に、実際の手旗信号を見てみましょう。
公益財団法人 日本海事広報協会さんが提供しているものが、おそらく最もわかりやすく、PDFでダウンロードもできるので便利。
一見すると、そこそこ難しい!!!
のですが。
ちゃんと見ると、カタカナの形状を旗で表現する、ということなので、型と書き順さえわかっていれば、パターン化されているので大体の予想はつきますね。
全部覚えておくのはちょっと厳しそうですが、データやプリントアウトして持っておくのが良さそうです。
今回の教訓なンです。
と言うことで、手旗信号の実力は好極了!!
サバイバルポイント
・手旗信号は無電源、簡素な道具で遠隔通信ができる
・布の大きさは問わない
・主に海上で使用されるがそれ以外でも使える
・全種類、覚えておくのは困難。データか紙を持っておこう。